“児相”の家庭訪問に同行

私が受付で待っていると家庭訪問に向かうため職員が出てきました。子どもが長時間激しく泣いているのは事実なのか。親に直接確認しなくてはなりません。

児童相談所を出発したのは、閉庁時間を過ぎた夜。共働きは今や当たり前で、昼間不在の家庭は珍しくありません。訪問などの業務が夜になることもあります。目的の家庭へと歩きながら、職員に話を聞きました。

――家庭訪問で怖い思いをしたことは?  
児童相談所 職員
「今のところは大丈夫です。親とうまく話せた時は良かったなって気持ちで帰っています。私はやりたくてついた仕事なので。お子さんの人生のターニングポイントに携われるのは大変なこともあるけど、やりがいもある」

住宅街に入ると、街灯の薄明りの下で自転車に乗った女性が待っていました。同じ世田谷区が運営している、「子ども家庭支援センター」の職員です。

“子家セン”の力も欠かせない

子家センこと「子ども家庭支援センター」も世田谷区の部署です。仕事は子育て支援で、虐待リスクがある家庭にも対応します。(都内の他の自治体にも設置されています)

“児相”と“子家セン”の違いはそう複雑ではありません。

児相は【緊急度が高い家庭】を主に担当。そのため子どもを親から一時的に引き離す「一時保護」など強力な権限を持っています。

子家センは【緊急度が比較的低い家庭】を担当。子育てをサポートし親の負担を軽くすることで虐待を予防しています。

なぜ児童相談所と子ども家庭支援センターが一緒に家庭訪問するのでしょうか。

子ども家庭支援センター 職員
「子ども家庭支援センターが主に対応する家庭ですが、なかなか会えないので児相に協力をお願いしました」
「親が子ども家庭支援センターの訪問に応じてくれない」
こんな時、児童相談所が同行すると連絡が繋がることがあるそうです。逆に、児童相談所の名を聞くと関わりを拒む親もいるため、子ども家庭支援センターの力も欠かせません。

協力しながら虐待対応にあたる児童相談所と子ども家庭支援センターの職員。家庭訪問に向かう途中立ち止まり、私にこう告げました。

児童相談所 職員
「ちょっと確認してきます。離れた場所で待っていてください」

通報があった家庭のプライバシーを守るため、取材者の私が同行できるのは途中まで。職員2人は“泣き声が長時間聞こえる”と通報があった家庭へ歩いていきました。