「日本の家計の値上げ許容度も高まってきている」。日銀の黒田総裁の発言に波紋が広がっています。黒田総裁は7日「100%正しかったかと言われると、若干ためらうところがある」と釈明しましたが、そもそもこの発言の根拠は何なのか。深掘りしていきます。
■日銀の黒田総裁「家計が値上げ受け入れ」発言に波紋
井上貴博キャスター:
他に選択肢がなく受け入れるしかない状況で許容していると言われると、どうしても納得できないところがあります。日本銀行の黒田東彦総裁の“家計の値上げ許容”発言について見ていきます。

6月6日、金融政策運営などについての講演で「日本の家計の値上げ許容度も高まってきているのは、持続的な物価上昇の実現を目指す観点からは重要な変化と捉えることができる。“値上げを受け入れている間”に良い経済環境を維持して賃金の本格上昇に繋げていけるかがポイントだ」と話しました。黒田総裁は何を根拠に、この値上げ許容度が高まってきているという発言を行ったのか。
値上げに関するアンケート調査の資料が公開されています。これは日本を含めた5か国アメリカ、ドイツなども入っています。各国で人数が違い、日本だと大体8000人ほどに取ったアンケート調査です。
Q:なじみの店でなじみの商品の値段が10%上がった時、皆さんはどうしますか。
【2021年8月】
・値段が上がっても、その店でそのまま買うという人が43%
・値上げするんだったら、他の店に移るという人が57%(他店に移る人の方が多い)
【2022年4月】
・その店でそのまま買うという人が56%(10ポイント以上増加)
・他店に移るという人が44%
他の海外のデータだと「他店に移るという人」が増えていた。しかし、日本は「その店でそのままお店で買うという人」が増えていた。とすると、この値上げ許容度が日本では高まっているのではないか。
もう一つ仮説として挙げていたのが、“強制貯蓄”というキーワードです。コロナ禍で、普段であれば出費するところが使えなかったので、強制的に蓄えられたお金、これが一つ仮説として浮かび上がるんだという説明です。日本の強制貯蓄は2021年末時点で、約50兆円と日銀は試算しています。家計の値上げ許容度の改善に繋がっている可能性がある。コロナ禍で使いたくても使えなかったお金がこれだけある。そこで、このアンケート結果の値上げが起きてもそのお店で買うという割合が増えているのではないか。となると、値上げ許容度をある程度受け入れてもらえているのではないかということが今回の発言に繋がったようです。