今回は、化学物質過敏症の当事者が苦しむ「香害」について取材しました。
香りで体調を突然崩す「香害」
化学物質過敏症というのは、生活環境の中の微量な化学物質に接することにより、体調が悪くなる症候群であるとされています。その中でも、今まで嗅いだり触れたりしていた香り・におい…例えば、洗濯用洗剤や柔軟剤、シャンプー、虫よけスプレーや工作用具の糊の香りなどによって、突然体調を崩すなど、健康被害を受けるのが「香害」です。これは消費者庁や各自治体などによっても定義されています。
5年前に突然、香害に悩まされるようになった化学物質過敏症の当事者の佐藤さん(仮名)に詳しくお話を聞きました。
ーーいつ、香害に気が付いたのでしょうか?
化学物質過敏症の当事者の佐藤さん
「友人と銀座で待ち合わせて会う時に電車に乗って行きますよね。そうすると電車に乗るたびにお腹を壊すんですよ。で、そういうことが続くものですから。その時に気が付いたんですが、電車の中で隣に座ってた人がものすごい柔軟剤の匂いのする服を着てるわけなんです。で、それでお腹を壊したんじゃないかっていうのと同時に、そういえば今までお腹を壊したのも、みんなそんな匂いがする人たちだったなっていうことから、これはおかしいんじゃないかっていうことで、インターネットで調べ始めた時に『香害』という言葉に当たったわけなんです。あぁこれかもしれないと思いまして」
防毒マスクで乗車 日常への影響も大きい
辛い香害ですが、日常生活にも支障が大きく、防毒マスクをしないと電車やバスに乗れないというほどの人もいるそうです。佐藤さんは外出も控えているため、2年くらい健康診断にも行けずにいます。仮に病院に行っても、病院職員の着衣の柔軟剤や洗剤のにおいで体調が悪くなってしまいます。
ただ、佐藤さんは「私は軽い方なんです」と話します。患者のなかには、職場などの環境で体調を崩して仕事を辞めざるをえなくなり、生活に困窮して死活問題になっている人もいるそうです。症状も本当に人それぞれで、頭痛に吐き気、肌がかぶれて真っ赤になってしまう人も。