今、小児医療の現場が“災害級”の危機的な状況に陥っています。感染症にかかる子どもが急増しているためですが、取材を進めると、さらに根深い問題が見えてきました。
今月、東京の「板橋中央総合病院」。
「向かっている?タクシーで来ているんですね」
「20分で来る?あと20分で救急車がきます」
こちらの小児病棟では連日、入院の受け入れ要請が鳴り止みません。
消防隊の背中には、埼玉県の「戸田消防」の文字。
「埼玉なんですね、あの辺ってもう全然受けられない?」
「戸田中央(病院)も今、入院患者さんがいるということで…」
運ばれてきたのは、発熱などの症状を訴える1歳の女の子。受け入れ先がなかなか見つからず、県を跨いで運ばれてきました。
板橋中央総合病院 小児科 齋藤宏 主任部長
「よくありますね、多いです。もうずっとですね、この2、3か月以上」
この病院では5月頃から、子どもの受け入れ要請が急増したといいます。
その理由は感染症の増加です。最新の調査で、夏かぜの「ヘルパンギーナ」と診断された1医療機関あたりの患者数は過去10年で最も多く、「RSウイルス」や「インフルエンザ」などの感染症も同時に広がっています。
取材をしたこの日、36ある小児用の病床は一時満床に。今、都内の小児病院は軒並み、満床に近い状態だといいます。
板橋中央総合病院 小児科 小泉圭美 看護師長
「10とか15の病院をお断りになってやっと来られたという方もいらっしゃいますし、余裕はないですね」
なぜ、小児医療はここまで危機的な状況に陥りやすいのでしょうか。病院の加藤院長は、小児病院の減少が理由のひとつにあると話します。
板橋中央総合病院 加藤良太朗 院長
「小児医療をきちんとやろうと思うと、救急もやらなきゃいけない。小児の病床なかなか増えてない」
実際、1990年代の前半には全国で4000余りあった小児科の病院は、この30年で4割近く減少。小児科は、成人の患者を診るよりも多くの人手と時間が必要とされ、経営上はお金にならない“不採算部門”と判断されがちだといいます。
板橋中央総合病院 加藤良太朗 院長
「子どもの患者さんって非常に波があるので、相当大きな病院じゃないと、小児医療に必要な人件費を賄うことができない」
しわ寄せは、子どもたちに…
子どもが病院に入院
「5日間ぐらい家でみてて、どんどんどんどんその熱が下がらなくて、もう咳がひどくて。肺炎って言われちゃって、そのときも別の病院にかかってたんですけど、『ベッドがない』って言われて」
今、現場からは当面の支援策として、コロナの際に自治体が行っていた入院調整などを求める声が上がっています。
板橋中央総合病院 小児科 齋藤宏 主任部長
「今回みたいに、二次救急レベルのもので病床が全部埋まっているときに、みんなで病床を共有するみたいなそういうシステムがあれば」
加藤院長は「いつか小児医療は崩壊する」と危機感を募らせています。
板橋中央総合病院 加藤良太朗 院長
「当院がもし入院を制限してしまうと、地域の小児医療が崩壊するかもしれない。小児医療が脆弱だということは理解して、強化するような対策を取ってもいいのでは」
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