「カディロフに近い人物が多いエリート部隊は当然ながら前線には行かない」
正規軍がやらない“汚れ仕事”を担うという点で類似する2つだが、カディロフツィにはワグネルと決定的に違う点があった。
人権保護団体『北カスカフSOS』 アレキサオンドラ氏
「カディロフは自分の兵士を大切にしている。戦闘能力を維持し自分の影響力と権力を見せつけるためには前線で被害を受けていない元気な部隊が必要。なのでカディロフツィはいつも後方にいる。カディロフツィは戦闘をせず、制圧した地域で治安の維持を担っている。カディロフに近い人物が多いエリート部隊は当然ながら前線には行かない」
カディロフツィも動員した兵士はどんどん前線に送るが、自分たちが率先して戦闘に加わることはないので殆ど役には立たない。その点でもカディロフツィはワグネルに取って代わる存在ではないという。

東京大学先端科学研究センター 小泉悠 専任講師
「カディロフツィの存在がカディロフ首長の権力の源泉だから大事にしなくちゃならない。ところがプリゴジンは刑務所から重犯罪者集めてきて死んでもいいからってどんどん送り込む。プリゴジン自ら刑務所で募集する時“お前らのうち15%しか生き残らない”って言っちゃってた。だからワグネルは強かったけど、カディロフツィはそれができない」
「彼らはチェチェン民族の裏切り者だ」

ロシア人やロシア軍の中にはワグネルを支持する人は大勢いた。しかし、独立を望んでいたチェチェン人にカディロフツィを応援する人はいないといわれる。逆に今回の戦争でウクライナ側に立って戦うチェチェン人がいる。彼らはカディロフツィを“裏切り者”と呼ぶ。
インタビューに応じた人物は“自分たちの最終目標はロシア帝国を根底から破壊すること、悪に終止符を打つ“と語った。彼の部隊は9か月の間、激戦地バフムトでの作戦に参加していた。

ウクライナ側に立つチェチェン人義勇軍 マンスール副司令官
「カディロフの部隊は前線ではなく一番後ろにいる。掃討作戦が完了した静かな場所に来てPR活動を行い威張っている。私たちは戦場にいるが彼らは一番後ろにいるので当然ながら接触したことはない。(中略)ロシア側で戦っているのはチェチェン人ではない。チェチェン人を名乗るカディロフ個人の部隊だ。彼らはロシア人でもあるというが、私たちはロシア人であるなんて今までもこれからも言うつもりはない。そこが大きな違いだ。チェチェンに愛国者と裏切者がいる。カディロフの部隊がウクライナを攻撃しに来たのは知っている。彼らはチェチェン民族の裏切り者だ」
マンスール副司令官らの義勇軍は、90年代、2度にわたるチェチェン紛争で、独立を志し敗れた退役軍人で組織されている。言うなれば自由を求めて戦いプーチン氏及びその命を受けたカディロフ氏らに鎮圧されたチェチェン人の弔い合戦でもあった。

国際情報誌『フォーサイト』元編集長 堤伸輔氏
「実はカディロフという人は自分のまだ10代くらいの3人の息子を連れてきて、愛国者でロシアのために戦ってますっていう姿を見せましたが、実は自分や自分の家族は安全なところでスタンドプレー的に戦っているフリをしている。これはかつてチェチェン独立のために戦った人たちから見れば許せない。それこそ裏切者としか思えない」
(BS-TBS 『報道1930』 6月27日放送より)














