沖縄戦体験者の4人に1人がPTSDのリスク 数十年経過して現れる症状

戦場での強いストレスを伴う体験がトラウマとなり、不眠や体の痛みなどの症状に苦しめられる『戦争PTSD』。

沖縄戦の体験者、およそ400人を対象にした10年前の調査では、4割近い人が「心的外傷後ストレス障害=PTSD」のリスクが高い状態であることが分かりました。

調査に携わった精神科医の蟻塚亮二さん。2010年、高齢の患者が訴える『不眠』の症状が沖縄戦の記憶と関わりがあることを発見しました。

精神科医の蟻塚亮二さん
「自分の故郷っていうのは自分の心の一部だっていう感覚。艦砲射撃で山の形が崩れるとかっていう時にね、そのことの衝撃っていうのは、自分が壊れるような感覚だったんだろうなって思いますね」

今月行われた沖縄戦に関する研究会。そこに玉木さんの姿がありました。

玉木利枝子さん
「やっぱり亡くなった家族のことがほとんど出てくるんですね。で、眠れなくなって、睡眠薬のお世話になって50年超すわけなんですけども」
蟻塚亮二医師
「年齢が高くなるにつれて、思い出すのが多くなってきましたか?」
玉木利枝子さん
「そうなんです。枕に頭を置いたとたんに、そういうのが出てくる」

沖縄戦から数十年経過して現れる症状。78年前に刻まれた心の傷は癒えることなく、身近な人との死別や、仕事や育児から離れたことなどをきっかけに症状が現れることも多いといいます。

精神科医の蟻塚亮二さん
「ご主人の喪失体験がきっかけになって、つらい記憶が噴出してきた。沖縄戦の特徴っていうのは、家族ぐるみで逃げてるもんだから、近親者の死亡を目撃してる人が非常に多い。死ぬのを目撃することの質が、単なる戦場の死とは違うんですよ。近親者の死」

「水を飲ませてやれなかった…」消えることのない記憶と次世代に繋ぐ思い 

(講話を行う玉木さん)
「兄はというと、破片で肩先からバッサリやられて、血染めになった腕がまだ体に付いています。『水がほしい、水がほしい』とうめきながら、ついに息を引き取りました。水を飲ませてやれなかった。いまだに悔やまれます」

家族を失った記憶を語り続ける玉木さん。これまでに行った講話は、1000回を超えました。

戦争PTSDに悩む 玉木利枝子さん(89)
「考えられますか?今みなさんが水を飲む、学校で学ぶ、遊ぶ、帰れば家族のだんらん。当たり前です。考えてもみないことです。でも彼は、その冷たい水の一滴も飲むことができなかった。みなさんがこういう目に遭ってはいけない」

10歳の少女が目の当たりにした凄惨な光景の記憶は78年たっても消えることはありません。終わることのない戦争が、体験者の内側で今も続いています。