「侵攻」直前に何が起きていた?

佐々木正明教授:はい、直前の状況を詳しく説明いたしますと、まず5月の段階で、東部戦線からワグネルの部隊は引いております。今、少し休息をしている状況だった。ウクライナの反転攻勢がある中で、ロシア軍として戦っているわけではなかったというのがまず一点。そしてその間にロシアの国防省が、ワグネルの部隊を国防省の傘下に入れようとした。そして傘下に入れようとしたところを、プリゴジン氏が否定、拒否していたというのが現状です。その交渉が決裂したことが、この現状になったんではないかというふうに思います。

――プリゴジン氏が怒り出した一つの原因とされるのが、ロシアのショイグ国防相です。自分たちの存在がロシアの管理下になってしまうんじゃないかということに怒ったとされます。ただそんなことしたら、ワグネルの兵士も、プリゴジン氏も命が危ないんじゃないのかと、思ってしまうんですが。

佐々木正明教授:これはおそらくプリゴジン氏の意思が強く働いてると思います。プリゴジン氏は、自分自身の存在感を高めるために、ワグネルを使っている。ワグネルという軍事会社を通して、ロシアの大事な将来を握る戦争に参加している。そして、プリゴジン氏が発言することによって国内でもステージがどんどん上っていきましたよね。クレムリンの内部抗争も勝ち抜くような状況になっていた。パワーバランスが変わっていったところで、ショイグ国防相がプリゴジン氏の勢力伸長をストップしようとした、っていうようなことも言えると思います。

中野雅至教授:内部の権力闘争なんでしょうが、これが瓦解の始まりか、路線が純化していくのか、どうなるのでしょう。

佐々木正明教授:私、ロシア社会の情勢をつぶさに見てきているんです、小さなシグナルを見てきましたが、いまいちプーチンの支持率はよくわかっていない。今回、プーチン大統領は抑えたということもできるんです。それほど、プリゴジン氏の方につかなかったとなりますと、プリゴジン氏が反乱を起こそうにしてもプーチンは抑えることができた。一方で今回、プリゴジン氏が、ロストフを去るときに、群衆が集まってきて、「ワグネル!ワグネル!」と、大きな喝采を送って、これをどのように見るか、今ロシア国民の中で不安と不満が高まっている。ワグネルはそれを打破するような存在ではないか。やはりプーチン大統領もおそらく、苛立ちと戸惑いが、心の中にあるんではないかなというふうに思う。

――プリゴジン氏は、進軍をやめたわけですね、そこにどんな関わりがあったのかというと、ロシアの同盟国ベラルーシです。あくまでベラルーシ大統領府の発表ですが、ルカシェンコ大統領がプーチン氏との電話会談を受けて、プリゴジン氏と協議し、進軍をやめ緊張緩和の措置を講じることで合意したということなんです。なんでいきなりベラルーシが出てきたんですか。