在宅死に向き合う家族に、在宅医が伝えたい3つのこと

『さくら在宅クリニック』内田賢一院長 年間約120人の看取りに寄り添う

内田医師は、在宅死を経験した家族たちに寄り添ってきた経験から、大きく3つのことを知っておいてほしいと話す。一つ目は、過度な不安は必要ないということだ。

「まずは、難しいことではない、病院でなくても、家族でもできるんですよ、ということです。

皆さん、自宅で看ることに不安や心配が多いようです。『私にできるんでしょうか?』『痛くないようにできますか?』『苦しくなくできますか?』と家族からは本当にいろんな質問をうけます。

そもそも、医学的に介入の余地がもうない場合は、病院にいる理由はないです。痛みを取る、苦痛を取ることに関しては、家でも、病院でも、やることは一緒で、医療者に任せればいいのです。そうした部分で、難しいことを家族に要求することはないです」

経験したことがないものに対する漠然とした不安はいらない、ということのようだ。しかし、だからといって簡単なことだというわけではもちろんない。在宅医療には、家族に身体的、そして心理的な負担が生じるということも、知っておいてほしいことの一つだという。

「患者さんは、終末期の不安もありますし、だんだんいろんな訴えが強くなっていきます。それに対しては、家族が、医療者と同じように応えなくてはいけません。

もうちょっとずらしてくれとか、ちょっと起こしてくれとか…病院だったら医療者がやっている仕事を、家族がやらなくてはいけません。しかも24時間、夜勤状態が続くという部分は身体的に難しいところです。

さらに、心理面では、僕らは仕事として対応できる部分があるのですが、家族にとっては、目の前で家族が亡くなっていくというのは非常に酷で、大きく感情の部分で対応するので、気持ちの振れ幅がとても大きいです」