日本製ロボット登場に加え、遠隔手術の実現も秒読み?

ーーでは、ロボット手術が今よりもっと普及するための課題とは?

「やはり、費用の高さが壁です。機種によりますが、ダ・ヴィンチは1台約1.5~3億円と高額。しかも鉗子は別売りで、安全に使える回数が機械で管理されており、その都度買い替える必要があります。小さい病院や個人病院ではなかなか導入できませんし、各科で症例数が増えなければ保険適用も進みません。

ただ、近年では日本製の『hinotori』やアイルランド製の『ヒューゴ』といった、新しい手術支援ロボットも発売されました。競合が出てくればダ・ヴィンチの独占市場が崩れ、ロボット全体の値段が下がると期待できるでしょう」

このように両手でアームを遠隔操作する

ーー最後に、ロボット手術を巡る医療業界の展望を聞かせてください。

「外科の仕事は厳しく、医師が不足しがちで、特に60歳を超えての手術は大変疲れます。50歳以上になってようやく悪性腫瘍の手術にも熟練してくるのに、そこから引退するまでが短いという、もったいない現実がありました。

でもロボットを使えば、年を取っても手術ができます。開発者はここまで考えていなかったと思いますが、これから医師になる若い方も『長く続けられるなら』と、外科を志すことが増えるのではないでしょうか。私自身もダ・ヴィンチのプロクター(認定指導医)として、後進の育成に取り組んでいるところです」

先生いわく、「患者の元に医師本人がいなくていいのか」という倫理的な問題もあるにせよ、技術的には離れた病院のロボットを遠隔操作して手術することも可能だといいます。医療がDX化を果たすにあたり、ダ・ヴィンチをはじめとするロボットが一つのカギを握っていることは間違いなさそうです。