終わった瞬間「人生 生きて死んだな」踊ることは私にとっての使命

(千神アナウンサー)
「男性が周りにいる中で、中心で1人上野さんが踊られていますよね。踊り切ったあとは、どんな気持ちなのですか?」

photo : Shoko Matsuhashi

(東京バレエ団ゲスト・プリンシパル 上野水香さん)
「終わった瞬間、色々な気持ちになるというか、時によって違います。だから終わった瞬間に、『人生生きて死んだな』『1日始まって終わったな』『今日はすごく切なかった』『今日は何だか喜びが』とか、終わった後に分かるのですが、日によって全然違います」

「前回、岡山で踊った時とはまた違ったフィーリングになるかな、という気がします。毎回踊っている中で感じることは違うのです。すごくシンプルな作品で、衣装も装飾も何もなく、難しい動きなどがあるわけではない中で、演者そのものが浮き彫りになる。いやでもむき出しになるのです。人間そのものが、すごく見えてくる作品だと思います」

「その人の、そのときの状態というものが、すごく反映されるという特色があるので、何度でも見られるし、何度見ても違う感想になるという感じですね。すごく楽しみです。ぜひいらしてください」

(千神アナウンサー)
「少し話は変わりますが、そもそもなぜバレリーナになろうと思ったのでしょうか」

(東京バレエ団ゲスト・プリンシパル 上野水香さん)
「バレエが好きで、楽しんで踊っていただけですが、やはり子どもの頃みんなが憧れる『ローザンヌ国際バレエコンクール』に挑戦をして、そこでスカラシップ賞をいただいたことがきっかけです。この賞は、1年間無料で留学して、将来頑張ってくださいというものですが、結局ローザンヌで賞をいただくっていうことは、その時点で『すごくいい』や『素晴らしい、あなたは速攻でいいダンサーだ』というのではなく、『これから学んでいけば、可能性がすごくあるよ』ということを言ってもらった感じがました」

「だから私は、その時点では、全く自信はなかったのですが、ローザンヌの賞をいただいたときに、もしかしたらプロでやっていけるのかもと初めて思うことができました。それまでは、バレリーナになる自信がなかったです」

(千神アナウンサー)
「海外のバレエ学校に行って、どんなことを感じられましたか」

(東京バレエ団 ゲスト・プリンシパル 上野水香さん)
「最初は、やはりカルチャーショックを受けました。海外の方は、みんなただ佇んでいるだけで、バレリーナっぽいというか、大人っぽいというか。基本ポジションをして、ただそこに立っているだけで、もうバレエダンサーという感じがします」

「何かが香ってくるというか、これは一体何だろうと思ったと同時に、すごく素晴らしいなと思いました。だからこそ、自分だけの香りみたいなものを持てるようなダンサーになれたらいいなと思いました」

(千神アナウンサー)
「海外に行って自分だけの香りを出そうと決めて、日本で東京バレエ団に所属して、ここまでやってこられて踊り続けている理由とは」

(東京バレエ団 ゲスト・プリンシパル 上野水香さん)
「気づいたらそうなっていたという感じです。何度も『ずっとやっていていいのか』と色々迷ったり悩んだり、頭打ちになったり、そういうことが何度も何度もありました。その度に、何か神様だか、流れだか、風だか分からない、何かが自分に向いてきて、結局、踊り続ける方向に自分の人生が来ていて、気づいたら今になっていた。という感じです。バレエに導かれている感じが、すごくありますね」

(千神アナウンサー)
「バレエの神様がいるのかなと、私は上野さんを見ていると思いますね」

(東京バレエ団 ゲスト・プリンシパル 上野水香さん)
「いるかもしれないです。引っ張られている感じがします」

(千神アナウンサー)
「上野さんにとって、バレエとは?」

(東京バレエ団 ゲスト・プリンシパル 上野水香さん)
「私が踊ることで喜んでくれたり、それで生きる力をもらったり。元気になったとかすごく素晴らしいと言っていただくときに、踊りでもって人を喜ばせることができるのだなと気付かされます。だからこそ、私は『やってるんだな』だし、『やりたいんだな』だし、『やんなきゃなんだな』ということに気付くので、もしかしたら使命なのかなと」

「いい踊りを見に来てくださる方に、プレゼントするということは、自分の使命なのかもしれないと今の時点では思っています。体が永遠ではないので、踊れる間はそれが私にとっての使命なんじゃないかなと思っています」

〈上野水香オン・ステージ〉
全国ツアー岡山公演6月18日(日)15時開演 岡山シンフォニーホール 大ホール

上野さんへのインタビューは、現在Podcastでも配信中です。