「牛の幸せとは何か?」考え続けることに意味がある

(使われなくなった農地や棚田を牧場として再利用している)

宝牧舎では東京ドーム11個分の広大な土地で、約70頭の牛を自然放牧しています。

牛舎などは一切なく、自然の中を自由に動き回ることができ、ストレスが減ることで廃用母牛も再び妊娠するようになるといいます。

また、人工授精は行わず全て自然交配のみにするなど、牛への負担が少なくなる取り組みを行っています。

山地さんの妻・加奈さん
「うちの牛たちは市場では評価されないので、牛舎で飼って出荷したほうが収入的にも手間的にも効率が良いと最初は思っていました。ただ放牧をしたときの牛の喜び方だったり、健康的に歩いている姿を見て、今は納得して夫と一緒にやっています。牧場のことを1人でも多くの方に知っていただいていて、消費者の選択肢の中に入ってくれると嬉しいです」

牛の幸せを考え、様々な取り組みを行う「宝牧舎」ですが、最終的にはお肉として販売します。

山地さんは常に葛藤が付きまとっています。

宝牧舎・山地竜馬代表
「食肉処理場に牛を連れて行くときは、捨て猫を拾ってまた捨てに行く気持ち。とても罪悪感がある」

ーーでは、なぜお肉に?
宝牧舎・山地竜馬代表
「牛だけのことを考えていたら肉になんてしないですよね。結局は自分のことなんですよ。俺は牛と自然から、いろんなことを教わり、そして牛の幸せを考えることで今、幸せを感じています。牛は存在するだけで誰かを幸せにできると感じています。そして、それをいろんな人に感じてもらえる一番手っ取り早いやり方がお肉を食べて貰うことなんですよ」

宝牧舎・山地竜馬代表
「ただタンパク源を摂るだけなら代替肉や大豆ミートとか、培養肉でいいわけじゃないですか。でも俺は、この生きている牛を食べることで得られるものがあると思っている。だから牛の幸せを追求すること、牛が健康で生き生きと過ごすことが、いつか自分たちにも幸せをもたらすんだと確信をして、一所懸命牛を飼っています」