田中らが追加代表入りするプロセスは?

冒頭で触れたように、標準記録は極めて高いレベルで設定されている。昨年の世界陸上オレゴンの北口榛花(25、JAL・すでに代表内定済み)は、標準記録を突破しないで本番に臨み銅メダルを獲得した。

日本選手権終了時点の内定基準は、標準記録突破で出場資格を得ている選手に限られるので、今大会での新たな内定選手は3人だけと少ない。だが今後代表に追加されそうな有望選手も多い。

男子では100m優勝の坂井隆一郎(25、大阪ガス)、200m優勝の鵜澤飛羽(20、筑波大)、400m優勝の中島佑気ジョセフ(21、東洋大)、走高跳優勝の赤松諒一(28、アワーズ)と3位の真野友博(26、九電工)、やり投優勝のディーン元気(31、ミズノ)、同2位の新井涼平(32、スズキ)、同3位の崎山雄太(27、愛媛陸協)らが、Road toBudapest 23で追加代表入り有力な範囲にいる。

女子では100m障害1~3位の寺田明日香(33、Japan create Group)、青木益未(29、七十七銀行)、田中佑美(24、富士通)、1500mと5000mの田中希実(23、New Balance)、走幅跳優勝の秦澄美鈴(27、シバタ工業)、三段跳優勝の森本麻里子(28、内田建設AC)、やり投優勝の斉藤真理菜(27、スズキ)らだ。
現在はRoad to Budapest 23にリストアップされていないが、走幅跳2位の橋岡優輝(24、富士通)は出場試合数が5大会を越えれば出場資格内に浮上するだろうし、本人は「標準記録を跳ぶ」と明言した。

100m8位のサニブラウン・アブデル・ハキーム(24、東レ)も、昨年の世界陸上7位があるので、日本選手権の順位に関係なく標準記録の10秒00をクリアすれば代表入りする。日本選手権では左脚の痙攣で振るわなかったが、予選、準決勝、決勝と3本走った。Road to Budapest 23の規程の、5本をクリアしやすくなった。

また、レース中の接触で7位に終わった青木涼真(25、Honda)も、Road to Budapest 23で出場資格取得は有望。代表に内定した三浦以外の2~3位選手が出場資格を獲得できなければ、青木が代表に選考される可能性がある。

走幅跳で10位の吉田弘道(23、神崎郡陸協)も、この種目で唯一の標準記録突破者。日本選手権3位以内の全員が出場資格を得なければ、代表に選出される。
最重要選考会の日本選手権は終了したが、8月の世界陸上ブダペストに向けて今後も、代表候補選手たちの動向に注目したい。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
※写真は左が髙山選手、右が泉谷選手