8月の世界陸上ブダペスト代表3名が決定した。陸上競技の第107回日本選手権が6月1~4日、大阪市ヤンマースタジアム長居で行われた。男子では110mハードルに13秒04(-0.9)の日本新、今季世界2位記録で優勝した泉谷駿介(23、住友電工)と、同種目2位の髙山峻野(28、ゼンリン)、3000m障害優勝の三浦龍司(21、順大)の3人が、世界陸上参加標準記録突破と今大会3位以内の内定基準をクリアした。しかし標準記録を突破できるのは、各種目のエントリー選手数枠の半分に満たない種目もあるほど高く設定されている。日本選手権3位以内の選手が今後標準記録を突破した場合と、Road to Budapest 23(標準記録突破者と世界ランキング上位者を1国3人でカウントした世界陸連作成のリスト)でエントリー選手数枠に入った場合、8月2日以降の選考委員会で代表に選考される。
メダルにチャレンジできる力を示した泉谷
男子110mハードルの泉谷駿介が素晴らしいタイムを叩き出した。序盤こそ左隣のレーンの髙山峻野と並んでいたが、5台目以降は見る間にリードを広げ、2位に0.26秒の大差をつけて優勝した。13秒04は自身が2年前に出した13秒06(+1.2)を0.02秒更新。グラント・ホロウェイ(25、米国)の13秒01(±0)に次ぐ今季世界2位記録だ。
「日本記録を更新できて、13秒0台を(5月21日のゴールデングランプリ<GGP>の13秒07に続いて)2本出せたので、少し自信につながります。前半思ったより高山さんに出られたのでちょっと焦りましたが、その状況でも中盤以降、自分の走りができたのは大きいです」
泉谷の目は国際レースに向けられている。21年の東京五輪と昨年の世界陸上オレゴンは、ともに準決勝まで進出したが、準決勝で力を出し切れなかった。外国人選手と競り合ったとき、いかに自分の力を出すかが大きな課題となっている。
「今後は海外を転戦しても、このタイムくらいを出していかないとダメかな、と思っています。海外転戦でもしっかり結果を出して世界陸上につながるレースをしたい。今まで達成できなかったファイナル(決勝)を目指してやって行きます」
アメリカやヨーロッパで今後、ハイレベルの記録が出ることも予想される。現在今季世界2位の記録だと言っても、世界陸上本番前の順位はどうなっているかわからない。
だが、準決勝は13秒2前後の記録で通過できる。多少力を出し切れなくても、この種目初の決勝進出はかなりの確率で達成できそうだ。
「ファイナルまで行ければあとはやるだけなので、頑張って行きたいと思います」
メダル獲得は簡単ではないが、メダルにチャレンジする泉谷の姿がブダペストで見られる可能性が高まっている。
入賞が期待できる三浦と髙山
男子3000m障害は東京五輪7位と、この種目で五輪&世界陸上を通じて初めて入賞した三浦龍司が、8分21秒41で2位に約5秒差で圧勝した。昨年は世界陸上では決勝に進めなかったが、ダイヤモンドリーグ・ファイナルでは4位と、世界的な活躍を見せた。
日本選手権はGGPの8分19秒07よりタイムを落としたが、特に中盤で「推進力のある走り」ができたことが収穫だった。過去2年間の国際大会の経験で「世界に対しても前向きにチャレンジできる。そこは自分の武器」だと自覚を持てている。
「世界陸上では決勝に進出して、上位入賞を目標にしたいと思っていますし、ダイヤモンドリーグファイナルも必ず経験して、経験するだけではなく、3位以内、上位入賞というところも目指していきたいなと思ってます」
今季の三浦は昨年よりも強化期を後ろにずらし、シーズンインを後らせた。3000m障害は、GGPが初戦というのは昨年と同じだが、まだまだ全開の走りではなかった。日本選手権は雨の中で行われ、障害に脚を乗せていく種目にはマイナスとなるコンディションGGPより良い感覚で走れたことは、タイムに関係なく進歩だったととらえていい。三浦の23年バージョンの世界への挑戦は、順調に進んでいることを日本選手権で示した。
110mハードルの髙山は、泉谷にこそ敗れて2位だったが、13秒30と最低限のタイムでまとめることができた。
「前半は積極的に行くことができましたが、4台目で体が浮いてしまいました。ハードル間の走りも前に進まず、浮き気味になってしまった。でも向かい風の中では良いレースです」
追い風になると、踏み切り位置がハードルに近くなりマイナスの影響が出ることもあるが、一般的にはタイムは良くなる。髙山も「13秒2台前半くらいを狙えた」という。そのタイムを世界陸上の準決勝で出せば、決勝進出も現実的な目標になる。