嬉しい誤算~若竜の台頭
しかし、そこには予期せぬ“嬉しい誤算”が姿を見せた。新外国人選手、そして、中堅やベテラン選手の不調から、若い選手が起用されるケースが激増した。

開幕スタメンではなかった細川成也選手、この現役ドラフトでドラゴンズにやってきた24歳を代表格として、ルーキーの2人、福永裕基選手と村松開人選手は、課題の二遊間を守りながら、スタメン出場を続けている。この3選手は、昨季まではいなかった新たな「プラス3」である。

トップバッターとして躍動する岡林勇希選手と、4番の座を守り続ける石川昂弥選手、この入団4年目21歳の2人もしかりレギュラーだ。
投げる方では、小笠原慎之介投手と高橋宏斗投手(※「高」 は「はしごだか」)、左右の2人がローテーションを守っている。
「勝てる選手を使う」方針の「勝てる選手」が、いつのまにかイコール「若手」となっているのが、立浪ドラゴンズの現在地である。実はそれは歓迎すべきこと。
若い力は、時として大きく化ける。勢いがつくと、予想外の力を発揮する。その胎動は、私たちファンの耳にも確かに届いている。
歌詞になるオーダーを!
今後の戦いについての願いは、どうか、この若きメンバーで、迷うことなく2023年シーズンを完走してほしい。打者は規定打席数を、投手は規定投球回数を、それぞれクリアしてもらいたい。そんな腹を括った起用を、ベンチには期待したい。
合わせて、これまでも当コラムで何度も書いてきたが、落ち着いたオーダーが見たい。開幕2戦目早々からスタメンが入れ替わるなど、いまだに「立浪ドラゴンズ2023年のスタンダード」を見せてもらっていない。
打順も、そして、守備位置も、若い選手が多いだけに、ある程度は固定して戦ってほしい。応援歌『燃えよドラゴンズ!』、もし2023年バージョンが作られるとしても、現状では歌詞作りに迷ってしまうだろう。
劇的なサヨナラ勝ちがあれば、いきなり、1点も取れない惨敗もある。それでも、ペナントレースはまだ90試合以上もあり、戦いは続く。開幕時に立浪監督が選手に呼びかけたように「強い気持ちで」、チームがそれを忘れなければ、ファンは熱い応援を続けるはずである。
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。