北朝鮮の“衛星”に備え県内各地で配備が進められたPAC―3。しかし打ち上げが行われた31日は即応態勢はとられませんでした。こうした動きから、改めて配備の狙いを考えます。

5月31日、通告期間初日に打ち上げられた北朝鮮の『衛星ロケット』。緊張を感じさせるJアラートが鳴り響き、多くの県民が不安な朝を迎えました。
政府が、この日のために用意していたものがありますー
山田耕平カメラマン「航空自衛隊宮古島分屯基地上空です。アンテナや電源車が並べられ、着々と準備が進められています」

北朝鮮の“衛星”に対し政府はおよそ1か月前から「日本国内への部品の落下などに備える」として、迎撃ミサイル『PAC―3』部隊を沖縄本島のほか南西諸島の島々に配備。「万が一に備えて」迎撃態勢をとるはずでした。
台風2号が接近していた31日。
愛久澤記者「北朝鮮が通告した打ち上げ予告期間の初日です。現在PAC3が展開されている様子はありません」
防衛省関係者によりますと31日、宮古島と石垣島、与那国島の自衛隊基地に配備したPACー3の発射機は台風2号の強風の影響で立ち上げることができなかったそうです。

結局、自衛隊が迎撃態勢をとれたのは那覇・石垣・宮古・与那国のうち台風の影響を受けなかった那覇のみでした。
PAC―3の配備に批判的だった県幹部はー
県幹部「本気で落下物を想定した部隊展開ではなかったのでは」

自民党関係者からもー
自民党関係者「“住民の命を守る”と言っておきながら通告期日初日から展開できなかったことは致命的だ」
防衛ジャーナリスト 半田滋さん「防衛省にとって台風がきたことで何を一番大事に考えているかと、自分たちが持っているPAC-3が壊れないようにすることこそが大事であって、それぞれの島民の被害を食い止めるというのは、二の次なんだなというのが図らずも露呈した」
即応態勢がとれなかったPAC―3について防衛ジャーナリストの半田滋さんは防衛省の考えをこう分析します。

防衛ジャーナリスト 半田滋さん「防衛省から見ると台風でPACー3が転倒して壊れてしまう危険性と、実際に北朝鮮の人工衛星が南西諸島の島の上に落ちてくる危険性をはかりにかけた結果、どちらが蓋然性が高いかというと台風で倒れるほうが可能性は大きいし『それであれば取り返しがつかないからやめよう』ということでやめている」
また半田さんは、韓国による衛星の打ち上げを例に政府の警戒態勢について指摘しますー
防衛ジャーナリスト 半田滋さん「韓国も全く同じような南西諸島の上空を通るルートで人工衛星を複数回打ち上げていて、一番最近は5月25日に打ち上げている。この韓国の衛星に対して一度も破壊措置命令を出さず、北朝鮮に対しては毎回出すというのはことさらに北朝鮮を危険視しそのために防衛力強化が必要と、南西諸島の防衛力強化が必要だと県民の考え、人々の考えを誘導する意図があるのではないか疑いたくなる」

半田さんは、およそ1か月も前から進められたPACー3の配備ですが、実際、北朝鮮の通告期間初日に即応態勢がとれなかったことからは「配備が軍事技術的な話ではなく政治目的のためのように感じる」と指摘しています。