「欧米の人はSFとして受け取っていた」目の当たりにした文化の違い

小川キャスター:
「レンタル部下」という着想に至った理由も伺いたいです。様々な代行業を番組でもお伝えする機会がありますけれども、本当に今、ありそうなサービスでもあります。

上田監督:
ご存知の方も多いと思いますけど、実際に似たようなサービスというのはあるんですよ。ただ、とあるネット記事から大きくインスパイアを受けて作りました。そのネット記事というのが、中年男性の会社員が代行サービスから部下をレンタルして、一緒にカラオケに行ってリア充写真を撮って、SNSに上げて、承認欲求を満たしているというような記事だったんですね。

それを見たときに何とも言えぬ気持ちになりまして…。お金を払って承認欲求を満たす人々を描いてみたくなりました。

小川キャスター:
これでいいのか、日本社会みたいなものもあるんですか?

上田監督:
そうですね、自分自身も考えたくて、見る人にも問うてみたかったというか。

宮田教授:
世界から見たら日本の現実への風刺というのはどういう捉えられ方だったんですか?

上田監督:
今回カンヌに行っていろんな方に感想を伺って、すごい面白かったのが、欧米の方々は「SF」として受け取ってたんですよ。

小川キャスター:
リアルなものとしては受け止められなかったと?

上田監督:
レンタル彼女とかレンタル友達があまり知られてないので。日本で結婚式のときに友人をレンタルするサービスがあると言ったら、めっちゃ仰天してて。

宮田教授:
そこがまた一段ひねりになったんですね。世界の中でも、うねりができたという感じなんですかね。

上田監督:
一方、日本では、TikTokにコメントがすごい来るんですけど「本当にあるの?」「マジでありえそう」とか、全然反応が違うんですよね。文化の違いも痛感して、すごく面白かったですね。

小川キャスター:
この作品を通して改めて監督として気付かされたことや世界で受け入れられたことは、どんなふうに分析されますか?

上田監督:
少し前まで、幸せの指標がお金だったと思うんですけど、今はその指標が「いいね」になっているんじゃないかなという気持ちがあって、それって多分、全世界的にそうじゃないですか。だから世界的にも共感できるところがあったのかなとは思いましたかね。

小川キャスター:
でも、それってちょっといびつなものなのかもしれないですね。「いいね」が幸せの指標…。

上田監督:
そうですね。ある程度はそれを追い求めることは成長にも繋がると思うんですけど、行き過ぎると、どうなんだという気持ちはあるので、自分自身もそれを考えたくて作ったところはあります。