劣位のサルは「マウンティング」をお願いする

彼は、鏡の中の見知らぬサル(自分)をしばらく観察していましたが、やがて鏡に向かってお尻を向けました。
鏡の中の相手にマウンティングをお願いしたのです。
マウンティングとは、自分の優位性を示すために、相手に対して馬乗りになる行動のことです。
このサルは、鏡の中の自分に対して「私は順位が劣るので、どうかマウンティングをしてください」とお願いしたのです。

マウンティングをお願いする劣位のサル

ところが、その相手は何もしてくれないどころか、逆に、お尻を差し出してきます。
「いやいや、どうぞマウンティングをお願いします」と再度お尻を向けますが、どうしても乗ってきてくれません

彼はだんだん混乱し、不安になってきたようです。
何度も、何度も、何度もお願いをし、鏡に向かってお尻を差し出し続けるのでした。

ニホンザルの社会では、オスは順位をハッキリさせることで緊張を和らげたり、争いを回避したりできると言います。
順位の低いサルにとっては、マウンティングをしてもらえないことは、不安で辛いことなのでしょう。

なんだか“昭和のサラリーマン”のように見えてきます。
メンバーシップ型終身雇用という閉鎖社会。そこで決められた順位。力の強い者に媚びる代わりに得られる安心感。
このサルたちはカリカチュアとして面白いし、少しだけ哀しくもあります。

ただし、これは飼育されている群れの出来事です。