将棋の藤井六冠が渡辺明名人に挑む、名人戦第5局の対局が5月31日から始まります。第4局で渡辺名人に勝利し、名人のタイトル獲得に王手がかかる中、史上最年少での名人と七冠達成が期待されます。その舞台となる長野県高山村を取材しました。


将棋界で最も歴史があるタイトル「名人」。

次の名人戦第5局で藤井六冠が勝てば、谷川浩司十七世名人が持つ21歳2か月の名人獲得最年少記録を40年ぶりに塗り替えます。

さらに羽生善治九段以来2人目の七冠となり、こちらも最年少記録を更新。


その第5局は、5月31日と6月1日に長野県高山村で行われます。

(報告:藤井祐輔記者)
「周りを山に囲まれた高山村役場には、名人戦第5局の大きな垂れ幕が掲げられています」


高山村は長野県北東部に位置し、名古屋からは約300キロ。

村の約85パーセントが深い緑に覆われた自然豊かな所です。


人口は約6600人、村にある松川渓谷沿いを中心に8つの温泉が点在し、四季折々に癒しを求める人が多く訪れます。


中でも対局場所となるのは山田温泉にある旅館「緑霞山宿(りょっかさんしゅく)藤井荘(ふじいそう)」。

200年以上の歴史があり、森鴎外や与謝野鉄幹・晶子、菊池寛など、多くの文人墨客に愛された秘湯です。


藤井荘の名物料理は「ぽんぽん鍋」。

地元で採れた山菜などをシンプルにオイルで揚げ、うま味を閉じ込めたオイルフォンデュです。

また、158平方メートルの露天風呂付の最高級の部屋は一泊2食付で一人当たり11万6500円から。

ここでの名人戦は2021年以来、2回目です。


高山村はいまどんな状況なのか。記者が周辺で話を聞きました。


(信州高山村観光協会 涌井貞朋会長)
「(Q:名人戦の影響は?)絶大な影響ですね。素晴らしい観光の要にもなっている。山田温泉だけで400~500人くらい泊まれるエリアだが、そこはあっという間に完売となっています」


これまで村の多くの人が「いつか藤井荘で藤井さんの対局を」と強く願っていたといい、その時が刻一刻と迫っています。

世紀の対局を前に、村の人たちに今の気持ちを伺うと…。


(周辺の土産店)
「普段は閑散として静かな所なので、大いに盛り上がってもらうことを期待しています」


(高山村の住民)
「期待はしていますね。ぜひ2日間で(名人獲得を)決めてほしい」


30日午後に藤井荘に入った藤井六冠。

弱冠20歳で将棋界に、また金字塔を打ち立てるのか。

私たちは歴史の証人になるかもしれません。