“母の死“の状況…「葬式に金がかかると思った」
元号が「令和」に変わる前の2019年1月、母は自宅の居間で静かに息を引き取りました。その日のことを、男はこう振り返っています。
(弁護側の質問)
――弁護人「お母さんが亡くなった時の状況を教えてもらえますか?」
「朝起きて母親に声をかけましたが、反応がなかったです。ほっぺたを叩いても反応がありませんでした。息を確認したら、亡くなっていました。」
――弁護人「お母さんが亡くなる直前の様子や、どのように亡くなったのかはわかりますか?」
「前日の夜はご飯を食べていたので…亡くなった原因はわかりません。」
――弁護人「お母さんが亡くなっていることを知った瞬間、あなたはどう思いましたか?」
「『連絡しなきゃいけない』と思いました。でも『お葬式にお金がかかる』と思い…お金がなかったので連絡できませんでした。」

「母が死んだら、役場に死亡届を出さなければならないのはわかっていた」と話す男。しかし、死亡届を提出すれば、唯一の収入源である母の年金を受け取れなくなる…。
裁判で検察は「被告が『そのまま年金を受け取りたい』などと考え犯行に及んだ」と主張しました。男には姉がいますが、「姉に頼むと姉が葬式代を出すことになる。迷惑がかかる」などと考え、姉にも母の死を明かさなかったといいます。
こうして、男が母に「干渉しない」生活は、母の死後も続くことになるのです…。