女子走幅跳で昨年の世界陸上オレゴン大会代表だった秦澄美鈴(27、シバタ工業)が、5月3日の静岡国際(エコパスタジアム)に6m75(+2.0)で優勝。2位に41cm差をつける圧勝だった。日本記録(6m86、+1.6)を持つ池田久美子が、06年に出した6m75に並ぶ大会タイ記録。「日本記録は射程圏内。強気で行きます」。次戦のゴールデングランプリ(5月21日、神奈川・日産スタジアム)への期待が高まった。

フィジカル面の成長で助走に余裕

1cmの違いが肩書きを変えてしまうのが陸上競技である。大会タイ記録だったことを質問された秦は、次のように答えた。

「1cmだけでも超えられたらよかったのですが」

その1cmの違いが、世界陸上などで決勝進出か予選落ちかを分けるかもしれない。1秒、1㎝を大切にすることを肝に銘じているのだろう。

しかしコメントの最後に「でもうれしいです」と付け加えた。

昨年出した6m67(+1.6)の自己記録を2回目の試技で6m68(‐0.1)と更新したが、「1cmだけの更新は嫌だな」と思った。大会記録は出せるかぎりぎりのレベルだったのに対し、自己記録は大きく更新できる手応えがあった。

そして3回目で6m75と想定通り7cmも伸ばした。
自己新の要因の1つに秦は「フィジカル」を挙げた。

「脚だけ、上半身だけでなく、全身で瞬発力を高めるウエイトトレーニングを1年、2年かけてやってきました。だいたい形になってきましたね。力強い助走ができるようになって、スピードの上げ方が楽になりました。今までは脚を回すことでスピードを上げることがよくありましたが、地面を押せるようになって助走が楽になったんです。そうなると踏み切りも力強くなります」

自己記録だったことに加え、大会記録保持者が日本記録を持つ池田久美子だったことも「うれしかった」理由だろう。

池田は100mハードルで日本歴代7位(13秒02)を持ち、助走スピードが速いことで知られていた。6m86の日本記録を跳んだ際、助走の最高速度は9.65m/秒だった。学生時代まで走高跳が専門だった秦はそこまで速くないが、近年は池田のスピードに徐々に近づいている。