大型連休でにぎわいを見せる長野県内の観光地。
阿智村の昼神温泉に、観光需要の回復を見込んでコロナ禍でも投資を続けてきたホテルがあります。
逆境の中でも先を見据え続けたその戦略とは?

南信州随一の温泉地阿智村の昼神温泉。
連休中も長野県の内外から多くの観光客が訪れています。

(愛知県から)
「久しぶりにマスクも解禁されたし、涼しい風も吹くしこういったところに来られると気分もかわる」
「何回か来ているがお湯もすごく滑らかでいい」

温泉街の中心にある昼神グランドホテル天心(てんしん)。

柔らかな肌触りで「美人の湯」ともいわれる源泉。

これをふんだんに使った展望大浴場と露天風呂が自慢の宿です。

(児野喜孝(ちごのよしたか)総支配人)
「昨年来からの全国旅行支援などいろいろな施策によって、個人の旅行は回復しているかなと感じる」

年明けから徐々に増え始めたという予約は、2023年の大型連休、ついにコロナ前と同じ水準にまで回復しました。

(児野総支配人)
「(予約は)4日は43件の187人、5日は54件の188人。1か月くらい前からほぼ予約が入っていた」

ようやく戻ったいつものゴールデンウイーク。

しかし、ここまで来るには、アフターコロナを見据えた、ある戦略がありました。

新型コロナの影響で、このホテルでも年間およそ6万人だった宿泊客が、一時2万人台にまで激減。

売り上げも半分以下に落ち込みました。

(児野総支配人)
「個人の客はだいたい7割から8割に回復したかなと思うただし、団体やグループ旅行はほぼ回復していないので全体の数としてはとても厳しい」

コロナによって団体客がほとんどなくなった一方、個人や家族など少人数に旅行形態が変化すると考えたホテル。

そこで取り掛かったのが、館内の改修です。

(児野総支配人)
「ここは宴会場だが個人や家族連れが多いので個別に分けて使っている」

まずは100人規模の宴会場を、個室の食事処に。

車いすの利用者などのためのバリアフリー化を進めました。

さらに接客も、ひとりひとりのニーズに合わせた、よりきめ細やかな対応を心がけます。

(児野総支配人)
「これからは個人の客を大事にしていく。さらに従来よりも使いやすい施設、サービスの向上に取り組んでいきたい」

コロナ禍で直面した人員不足にも対応しました。

以前は90人ほどだったスタッフは、70人弱にまで減少。

休館を余儀なくされた際に辞めた人もいて、一部の施設はいまも開けることができない状況です。

(児野総支配人)
「一度離れたスタッフはなかなか戻らない。客が戻っても、逆に今度はスタッフの負担が大きくなるといった課題がある」

しかし、ここでもある仕掛けで対応します。

(児野総支配人)
「人手不足がとても深刻なので、こうしたものを導入してお客さんの案内に役立てている」

スタッフが館内を案内する時間を極力減らそうと、わかりやすい『動く館内図』を設置しました。

今後も人員不足を補うための効率化を積極的に進めるつもりです。

(厨房スタッフ)
「(何人分作る?)きょうは100人分くらい作る」

5月2日、本格的な連休を前にした平日にも関わらず、100人以上の予約が入りました。

スタッフは大忙し。

それでも、うれしさがこみ上げます。

(スタッフは…)
「前よりは全然来るようになったのでありがたいです。気持ち的にはうれしいが、身体的にはつらいですかね」


(児野喜孝総支配人)
「お客さんも、コロナで大変不自由な思いをしてやっと旅行に来れた状況だと思う。私たちスタッフも、コロナで大変な思いをしたが、せっかく来ていただいたお客さんを笑顔でお迎えして笑顔で帰っていただき、また気楽にきていただけるような天心を作っていきたい」

すべてはお客さんの笑顔のため。

長いトンネルの出口を信じ、課題を乗り越えてきたホテルに明るさが戻っています。