ーーでは、コメント欄はどんなことを書くといいでしょうか?
「保護者の方の連絡事項が無いようでしたら『昨夜はスムースにお風呂に入ることができました』など、本当にちょっとしたことでも大丈夫です」
ーーそうなんですね!?なんとなく特別なことを書かないといけないのでは…と、毎朝悩んでいました。
「コメント欄は、保育士に子どものすごいことを伝える場というよりも、保育士に子どもとの“会話のネタ”を提供する場とお考えいただきたいです。
例えば、『今朝はのんびり起きてきて、あくびをしながら朝ごはんを食べていました』と連絡帳に書いてあったら…
保育士『〇〇くん、昨日の夜はテレビとか見ていたの?』
子ども『〇〇で遊んでたー』
保育士『夜寝るの遅くなったかな?」
子ども『そうなの』
保育士『朝はどうだった?起きられた?』
子ども『起きられなかった』
というように、連絡帳に書かれているご家庭での様子を参考に、子どもがそのことを自分で表現できるように誘導しながらコミュニケーションを取ったりしているんです」
ーー家庭での日常の一コマが書かれていることで、子どもたちとの会話が広がるんですね。
「そうですね。子どもたちとそういうコミュニケーションを積み重ねていくことで『保育園の先生はお話をちゃんと聞いてくれる』『ぼくたちのことを見ていてくれるんだ』という子ども自身の安心感にも繋がるので、連絡帳の記入は大変だとは思いますが、おうちでの様子や出来事をちょっとでも書いてもらえる助かります」
連絡帳は“より良い保育”をするうえで、やはり必要不可欠のようだ。子どものことを第一に考えてくれる保育士の皆さんには、ただただ頭が下がる思いだ。
連絡帳の記入、保育士も負担に?
一方で、こんなデータもある。

『ノンコンタクトタイム』という、業務中に保育士が子どもたちから離れられる時間がどのくらいあるかという調査(※1)で、「全くない(0分)」と答えた保育士は、4割近くにのぼっている。つまり多くの保育士は、子どもから目を離せない中で連絡帳を確認し、保護者に向けて記入しなくてはいけない状況にあるわけだ。連絡帳の記入は保護者だけでなく、保育士にも負担がかかる作業といえる。
そんななか、最近では連絡帳記入の負担をテクノロジーで解決しようという動きも広がっている。その一つ、保育・教育施設向けの業務支援ツール「CoDMON」は様々な自治体で導入され、保育園と保護者間のやり取りがアプリで行えるという。
株式会社コドモン 広報 上砂智子さん
「手書きではないので入力時間を短縮でき、写真の挿入なども可能で、家や保育園で過ごしている様子を簡単に共有できます。必要事項のやりとりは、アプリ内で完結できます」
アプリ利用は、保育園や保護者の負担軽減につながっており、「CoDMON」を一度導入した施設の利用継続率は99.8%だという。
『子どものおもしろいエピソード』や『こんなことができるようになった!』など、書けることはないかと毎日なんとかひねり出していたが、連絡帳は、親が子どもの成長を保育士へアピールするためのものではなく、当たり前だが全ては“子どものためのもの”だったのだ。
家庭と保育園の双方が連携し、一緒に子どもたちの命を守っていく。手書きからアプリへと形は変わりつつあるが、連絡帳の存在はこれからも“なくてはならないもの”なのだと、改めて感じた。
※1「ノンコンタクトタイム調査報告書」全国私立保育園連盟2019年3月