私腹を肥やす奴は許さない!
人間の社会では、仲間のみんなが平等に「お互いさまです」と言い合えるならばハッピーなのですが、現実にはそうはいきません。こっそり自分だけいい思いをしようとする者が必ず出てきます。やがて我も我もと私腹を肥やそうとすれば、互いに疑心暗鬼になってしまいます。
人間はチスイコウモリよりも不公平に対してかなり厳しいです。
【私腹を肥やすな、ごね得だ、ただ乗りするな、格差だ、甘い汁を吸うな、職権濫用だ、横領だ、着服だ、ずるい、卑怯だ、汚い、・・・】
本当は、仲間に良くしてあげたらその分だけお返しをしてもらいたい。それが一番なのです。それなのに、自分勝手なズルいことをされたら、そいつは許しちゃおけない。
「やられたらやり返す、倍返しだ!」
研究者はこれを「しっぺ返し」と言います。
「お前なんか仲間じゃない。今すぐ出ていけ!」
太古の昔、共同体の外に追い出されれば、猛獣の餌食になるか飢え死にするでしょう。何とか生き残ったとしても、子供を生み育てる余力は残されていません。
このようにして、人間は「思いやり」を持つ方向に進化してきたと考えられます。
同時に「ハブられる」ことへの恐怖心も大きくなってきたことでしょう。
【顔色を伺う、空気を読む、みんなで渡れば怖くない、長いものには巻かれろ、忖度する、・・・】
「思いやり」は「仲間はずれ」とウラオモテの関係のようです。

チスイコウモリから人間を見たら、「そこまでしなくても…」と思うでしょう。
チスイコウモリには素朴な「お互いさまです」があり、人間社会には複雑に絡み合った「お互いさまです」がある。
ズルい奴らを懲らしめてやりたい!心の底から沸々と湧き上がる怒りのようなもの。それは、良い悪いは別にして、「人間らしさ」のひとつのカタチなのかも知れません。
YouTubeチャンネル「どうぶつ奇想天外・WakuWaku」より
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この記事は「どうぶつ奇想天外!」を監修していただいていた故・千石正一先生(自然環境研究センター)、2016年「生命38億年スペシャル“人間とは何だ…!?”」を共同監修していただいた長谷川眞理子先生(総合研究大学院大学)から伺ったお話を参考にしました。
参考図書:「進化と人間行動」長谷川寿一・長谷川眞理子著(東京大学出版会)、「これからの時代を生き抜くための生物学入門」五箇公一著(辰巳出版)