結果は減税勝利

今回、名古屋市議選で、河村市長率いる地域政党減税日本は改選前の9議席から5つ増やして14議席となりました。

これまで共闘してきた日本維新の会との関係を解消し、減税は厳しい戦いになるのではないかとも見られていた中で、減税VS維新という視点で見ますと、維新は改選前の1議席を確保はしたものの、減税が圧勝、とも言える結果となりました。

政党支持率から見た減税VS維新

これを出口調査から見てみますと、名古屋市内の減税の支持率は期日前と当日データを単純に合算して6%でした。4年前の時点では9%、調査の条件が異なりますので単純な比較はできませんが、4年前よりも支持率としては減っているように見えます。

一方の維新の支持率は今回は3%、前回調査では1%でしたので、これも単純な比較はできませんが、こちらは4年前より増えているように見えます。

また、4年前より、減税と維新では、差は縮まる傾向が見えるとは言え、それぞれの支持には、いまだ倍ほどの開きがあります。

ポイントは自らの支持層以外からの得票

では、単純な両党の支持率の差だけで今回の結果が導き出されたのでしょうか。

実は、そうではないと考えています。今回の減税VS維新については、出口調査の結果から、自らの政党支持層以外からの得票が大きな差を生んだと見ているからです。

CBC出口調査のうち、減税候補と維新候補が共に戦った、千種区と東区の市議選について見てみましょう。これも期日前と当日の出口調査を合算したものです。

まず、主な支持政党別に、どの党の候補に投票したのかをグラフにしてみました。各支持政党別に、減税候補に入れた人は赤、維新候補は青で%を示しました。

ひと目みてわかるように、有権者の皆さんは、必ずしも支持政党の候補に投票しているわけではないのです。また、特に千種区には立民の公認候補がいませんでしたので、立民は投票先が分かれる形になっています。さらに、公明支持、共産支持、国民支持層のそれぞれの公認候補への支持の固さも目立ちます。

さて、減税VS維新の視点からは、減税については支持なし層から23%得票しているのに対して、維新は6%、また、そもそも減税は、支持層の92%から得票しているのに比べて、維新は支持層の67%の得票にとどまっていることなどが目を引きます。

このように自らの政党の支持層の固まり具合に加え、こうした各政党支持層からの流入を含め、減税の候補、維新の候補がどのような得票構造になっているのかを調査の実数をもとに示したのが、次の棒グラフです。

減税VS維新は、減税が維新の候補の得票の3倍近くとなっています。実際の結果もこれに近い形となりましたが、グラフを見てわかるとおり、自らの支持基盤の厚みの差に加えて、支持なし層など、減税支持層以外からの得票で更に大きな差が開いたことが実感されます。

根強い河村市長支持 減税・維新それぞれの課題は

この差はどこから生まれたのでしょうか。
今回、わたくしが調査を担当したケースでは、「私は河村さんを応援しているので、減税の候補者です」とお話されるかたが相当程度いらっしゃいました。候補者の名前よりも、「河村さんの減税」という言葉が先に出てくるのです。こうしたかたは減税支持者に限りません。他の政党支持であっても、河村さんを支持するから、あえて減税候補に入れたとお答えになる方がいらっしゃいました。これは4年前にも同様の経験をしました。
一方で、今回は、「私は維新支持なので維新の候補者です」というかたもいらっしゃいました。候補者の名前より先に、維新という言葉が先に出てくるのです。これはわたくしが担当した調査では初めての経験でしたが、こうしたかたは、わたくしが調査した範囲では、維新の支持者に限られていました。

こうした現場での経験も含めて、名古屋市議選の減税VS維新の戦いをまとめますと、やはり河村市長個人に対する一部の根強い支持が、支持政党なしだけでなく、他党の支持者にすらあって、今回は、減税に軍配があがったのだといえるでしょう。

統一地方選で、この地方として初めて自らの旗を大きく掲げて戦った維新としては、この結果を踏まえ、まずは、この地方での地道な支持拡大と支持層固めという基本に加えて、どのように支持政党なし層にもアピールしていくのか、また、減税については、河村市長に対する根強い支持に加えて、今後、議員1人1人の顔がさらに見える地域政党にどう深化していくか、こうしたことを今後注目していきたいと感じました。

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