「核兵器というものを世界は知らない」母親の体験を朗読劇に サミット直前に上演へ

被爆から70年以上経ってから、被爆3日後に撮影された少女が母の幸子さんと分かりました。そして、藤井さんの気持ちにも変化がありました。
藤井哲伸 さん
「まさか自分の母親が被爆したとき、写真があるなんて想像もつかなかった。両親とも被爆者ですが、もうこの世にはいない。やっぱり伝えられることを、自分のできる範囲の中でやって行こうと」
藤井さんは5年前、同じ舟入高校演劇部の先輩・久保田修司さんに、母親をモデルにした創作劇を提案しました。久保田さんが脚本・演出を務め、被爆75年にあたる2020年夏の上演に向け準備を進めていました。
しかし、新型コロナが猛威をふるい、公演は断念せざるを得ませんでした。仕切り直しを考えていたとき、飛び込んできたのが、ロシアによるウクライナ侵攻です。核兵器の使用が現実のものとなりつつありました。
藤井哲伸 さん
「核兵器を使ったらどういうことになるのか。まだまだ世界に知れ渡っているとは言えない」
こうした危機感から被爆地・広島で開催されるサミットの直前に、朗読劇を上演することを決めました。
藤井哲伸 さん
「広島でG7サミットがあるから、海外メディアも集まってくる。この機を逃したら世界へ向けて発信する機会はないから、なんとかここでやろうと」
公演まで残り1か月となった4月16日、音楽や合唱隊を入れた初めての通しげいこが行われ、藤井さんも東京から駆けつけました。

藤井哲伸 さん
「やっとここまで来た。ここまできたらね、本当にいいものに仕上げたい」
朗読劇は、幸子さんの体験をベースに、主人公の女性がアメリカ軍人と出会い、アメリカで被爆証言をするといったオリジナルストーリーに仕上げられました。
広島だけでなく、海外での上演も目指しているといいます。核兵器を使えばどうなるか。どうやって平和を築いていくのか。幸子さんの人生を盛り込んだ朗読劇で訴えていきます。
朗読劇「蛍火」
5月17日午後7時 同18日午後3時と午後7時からの計3回
広島市中区 アステールプラザで上演
制作委員会(080・4131・0866)