重症化すると意識を失い、死に至ることもある「一酸化炭素中毒」。
実は自宅で事故が起きることも。その危険性や注意点について、呼吸器内科の医師に聞きます。

一酸化炭素中毒とは

一酸化炭素は、炭素が燃焼する際、酸素が不十分な環境で不完全燃焼を起こすと発生する、「無色・無臭」の気体です。
大量に吸い込むと血液中のヘモグロビンと結びつき、酸素運搬の妨げとなることで、血液中の一酸化炭素濃度が高くなり中毒を起こします。
症状としては、頭痛や吐き気、めまいなどで、重くなると意識を失い、死に至ることもあります。

恵俊彰:
一酸化炭素中毒の症状が続くことがあるんですか?

ハピコワクリニック五反田 岸本久美子院長:
一酸化炭素にさらされた期間や量にもよりますが、低酸素の状態が長引くといろいろな組織が傷つき、低酸素脳症などをひき起こす可能性があります。組織を回復するまでに時間がかかりますし、重症だと特殊な治療をしないと回復しないケースもあります。

恵俊彰:
どのような治療をするんですか?

ハピコワクリニック五反田 岸本久美子院長:
軽症の場合はそのまま安静にして換気すれば回復することもありますが、重症の場合には高圧酸素療法という特殊な部屋を使った治療が必要になります。

焼肉店での事故例

2021年12月、鹿児島市の焼き肉店で客の男女3人が飲食中に倒れました。病院に搬送されましたが命に別状はなく、一酸化炭素中毒と診断されています。
▼30代~60代の男女3人
▼テーブルの上にうつ伏せに倒れて嘔吐
▼窓を閉め切り冷房をつけていた
という状況でした。

本来はダクトに吸収されるはずの煙が冷房で循環してしまい、密閉している部屋で一酸化炭素中毒が起きたということです。

木炭や石油ストーブ 家の中でも

さらに、一酸化炭素中毒は家庭でも起こります。

東京消防庁HPによると、2015年~2019年の5年間で、住宅、共同住宅において27件の一酸化炭素中毒事故が発生し、44人が搬送されています。
症状の重さの割合を見ると、重症・重篤だけで27.3%。4分の1を超えています。

事例1)
80代2人(重症・中等症)50代(中等症)
換気扇を回しながら七輪と木炭を使用し、料理をしていたところ、1人が突然倒れ、さらに室内にいた家族も具合が悪くなった。

事例2)
20代(軽症)

自宅で石油ストーブを使用していたところ、頭痛と吐き気が生じたため、ストーブを消して換気を行い様子をみるも症状が改善しなかった。

恵俊彰:
家の中でも起こり得るんですか?

ハピコワクリニック五反田 岸本久美子院長:
木炭などが不完全燃焼すると、自宅でも起こり得ます。「自宅で起きるはずがない」と思う方が多いので、換気しないで何か燃やしてしまったり、ストーブをそのまま使うこともあります。意識して1時間ごとに換気をすることが必要です。
実際に体調不良になった場合には、病歴がすごく必要になりますから、医療機関を受診する際に使用したものを伝えてください。