「日本の公安調査庁はスパイ機関」記載された中国の極秘裁判資料を入手。浮かび上がるのは“スパイ行為”で拘束された日本人と公安調査庁との接点でした。中国高官から「公安調査庁にスパイがいる」と告げられた懲役6年の実刑判決を受けた日本人が証言しました。
“スパイ行為”で日本人拘束 “極秘”裁判資料を入手

スパイ行為に関わったとして、中国当局に拘束された17人の日本人。そのうち実刑判決を言い渡されたのは10人です。
裁判はすべて非公開。これまで、何が“スパイ行為”に問われたのか、正確にわかっていません。しかし、news23では、関係者から重要な文書を入手しました。拘束後、実刑判決を受けた2人の日本人についての判決文など、“極秘”の裁判資料です。
「国家秘密に関わるため、裁判は非公開」と書かれています。当然、中国語ですが、日本語に翻訳されたものもセットになっています。

“極秘”の裁判資料の一文
「スパイ罪、懲役6年、5万人民元(約100万円)を没収」
この2人について、中国当局は何をもってスパイ行為と認定したのか。その具体的な内容が中国側の「文書」によって初めて明らかになりました。
中国の法律の専門家は、この裁判資料について…

明治大学法学部 鈴木賢教授
「スパイ罪の判決書は公開されない。裁判も公開審理されない。私は初めて見ました」
「日本の公安調査庁はスパイ組織」 拘束日本人と接点か

関係者から入手した2つの判決文には、ある共通点がみつかりました。
“極秘”の裁判資料の一文
「被告人は日本のスパイ組織の代理人の任務を受け、長期的に我が国の国家情報を収集、報告した。スパイ組織の代理人の任務を引き受け、中国政府関係者に接触」

判決文がスパイ組織と断定したのは、日本の公安調査庁。そして、2人が「スパイ組織と知りながら任務を受け、情報収集活動」を行っていたとしています。
公安調査庁は、オウム真理教の後継団体「アレフ」の施設への立ち入り検査を行っているほか、国内外のテロ組織や周辺国の情報を収集する役割も担っています。
公安調査庁のパンフレットの一文
「得られた情報(インテリジェンス)を提供することで、政府の各種施策に貢献しています」
入手した裁判資料の一つは、中国で懲役6年の実刑判決を言い渡された鈴木英司氏に関するもの。鈴木氏は、中国外務省の高官との会食の際、日本で既に報じられていた北朝鮮の話題を出したことがスパイ罪に問われました。

スパイ行為で懲役6年の判決を受けた鈴木英司氏
「判決で私は日中友好人士の衣をかぶったスパイであるということになっている」
鈴木氏の判決文では、公安調査庁の調査官として4人の実名が挙げられています。

鈴木氏への判決文
「被告人は(調査官の)A、B、C、Dから依頼された中国に関する情報を収集し提供する任務を受けた。中国朝鮮関係などの情報を聞き取り、入手した情報をAらに提供した」
日中交流団体の元理事長で、政府関係者との勉強会などを頻繁に行っていた鈴木氏。
判決文に記された調査官らとは実際に面識があったといいます。そして中国に関する“意見”を求められたことはあったと話します。ただ…

鈴木英司氏
「(調査官から)『これはどうなんでしょうか』とは言われた。私自身も疑問を持てば、中国に行ったときに(関係者に)聞きますから。これは私の疑問であって公安調査庁に頼まれたから中国に聞くわけじゃない。それが『スパイにあたる』と言われるのでは何も話ができない。裁判のときも私は反対答弁をした」