去年11月、東京の入管施設で自殺したイタリア人の男性。男性が生前残していた映像には、彼の精神状態を示す重要な手がかりがありました。
東京の“入管施設”で自殺 イタリア人男性に何が?

イタリア人 ルカさん(56)
「こんにちは、東京福生市です。ホームレスになって2年と2週間…」
去年11月、東京入管の収容施設で自ら命を絶ったイタリア人のルカさん。
入管施設に収容される直前まで、東京・福生市でホームレス生活をしながら、命綱の携帯で動画を撮影し助けを呼びかけていた。
イタリアにいる古くからの友人は…

アナリザ ロジィ カッペラーニさん
「ルカはイタリアでグラフィックデザイナーをしていました。冗談をよく言う人で、同時に深い話もできるような友人でした。ホームレスになっているとは知らなかったので、とてもつらいです」
アジアでの生活に憧れたルカさんは2005年に日本に渡り、数年後、日本人女性と結婚した。
ところがその後、2人は別れ、2020年頃、ルカさんは在留資格を失ってしまう。
働くことも、生活保護を受けることもできなくなり、やがてホームレスになった。
そんなルカさんに食事やシャワーを提供し、支援を続けていた、マーセル・ジョンテ牧師。

ルカさんは冗談をよく言う明るい性格だった。
マーセル・ジョンテ牧師
「ルカさんは人を助けることが好きで、プロジェクターのスクリーンを直してくれた」
しかし、ルカさんには精神的に不安定な一面があったという。
マーセル・ジョンテ牧師
「たまに、すごく良くない状態。鬱っぽいような、怒ったり…」
ルカさんが残した映像には、彼の精神状態を示す重要な手がかりが残されていた。

「妄想性パーソナリティ障害の疑い」、精神科医の診断書だ。
その診断書を書いた精神科医。2018年、イタリア大使館からの依頼でルカさんを診察することになったという。
ルカさんを診察した医師
「ある一つのことになると、とうとうと持論を述べられる。それも、その根拠が間違っている。妄想とかに基づいて、猜疑などがひどくなっている状態」
「イタリアには身寄りもなく帰れない」と話すルカさんに医師は治療を勧めたが、ルカさんが再び訪れることはなかった。
そして去年秋、通報があったのか、ルカさんは入管施設に収容された。
1人部屋に収容されたというルカさん。マーセル牧師が面会に行くと、こう話したという。

マーセル・ジョンテ牧師
「彼は『私はここで死ぬ』と言った。(Q.なぜそのようなことを?)絶望。希望がなかった。私は彼に『諦めるな』と言った。『もうちょっと』と…」
その2週間後、ルカさんは、収容施設で自ら命を絶った。