現代アートや彫刻などを手掛ける県出身でパリ在住のアーティスト幸地学さんが、今月8日からおよそ4年ぶりとなる沖縄での個展を開催しています。コロナ禍で制作した作品や今後の展望などについて力強い言葉で語ってくれました


幸地学さん「色の配置とか形のこの形はこの形のそばにした方が良いとかそれを最大限に効果を発揮できるようにやる」

那覇市出身でフランス・パリ在住のアーティスト、幸地学さん。この日は、およそ4年ぶりとなる地元・沖縄での個展に向け、準備を進めていました。

作品の色や形など全体のバランスを考えながらいかに1つの作品に集中して鑑賞できるか、時間をかけて配置を考えます。

幸地さん「この感じで色の配置はいいと思います、うん」

幸地さんは、東京の美術大学を卒業後、20代でヨーロッパに渡り修業。1996年には、アメリカ・グラミー賞の公式アーティストに日本人として初めて選ばれ、一躍脚光を浴びます。

以降、数々の国際美術フェアに出品するなど、世界的アーティストとして確固たる地位を築いてきました。

今回展示するのは、コロナ禍の2021年に手掛けた絵画など31点。世界中が不安に苛まれた最中の作品ですが、個展のテーマは、まったく逆だと幸地さんは話します。

幸地さん「静かなるエネルギーっていう感じが今回の作品のテーマになりますね。コロナで散々打撃を受けて、落ち込んでいた時にやはり自分自身の生き方としてこれに反発しようとしたのがあったと思う。そういうエネルギーが働いていたんじゃないかと思うんです」

空間の中に浮かぶユニークな形の生き物たち。色鮮やかに、そして抽象的に描かれています。

幸地さん「見る側のイメージを駆り立てるわけなんです。あえてこういう風な形にすることによって私たちが潜在的に持っている無意識の世界などを放出させていく。もっと自分の中には自由な生き方があるはずだということを画を通して感じさせる」

今回の展示で唯一の彫刻作品『神話』。自由への憧れを表現しています。

幸地さんは、自身の作風について「西洋的でも東洋的でもない要素がある」と話します。

幸地さん「極めて沖縄的じゃないかなぁと思っている。これ一つの沖縄を象徴するひとつの植物としてガジュマルの根っこを意識していると感じる。それが何を意味しているかというと自由さだと思うんです。その自由さがガジュマルの根っこが曲線を描いて大地にしがみつくようなね」

40年あまりのキャリアのなかで様々な作品の影響を受けてもなお、創作の礎には、故郷・沖縄があるようです。

展示会の初日。会場には幅広い世代の来場者が訪れていました。

来場者「良い色合いだなぁと思ってほっとするようなイメージですよね。」
男の子「面白かった」
Qどんなところが面白かった?
男の子「意味分からないところ」

なかにはこんな方も―

来場者「グラミー賞の公式ポスターに採用されたときのCDジャケットを持ってきた。ちょっとサインをしてもらおうかなと。実は中身は開けていないですジャケットだけです。もう大切にコレクションします、ありがとうございます」

来月で69歳となる幸地さん。創作活動への情熱は留まることを知りません。


幸地さん「20代にやったときの展示会と今の気持ちは全く変わっていないですね。すごい緊張感があるし、全力でやらないとだめだと感じる。マンネリズムという形式主義に陥らないように常に希望と好奇心とワクワクした気持ちを持って作品を描き続けたいな」

幸地学展は、浦添市のSWMインテリジェンスセンターで今月16日(日)まで開かれています。