“解放交渉”内部文書200枚超

拘束された日本人の解放に向け、日本政府と中国政府は、どのような交渉を行っていたのか。news23では、外務省への情報公開請求を行い、2021年3月までに拘束された15人についての内部文書、約200枚を入手しました。

開示までに要した期間は10か月。開示された文書は、“拘束”をめぐる、主に外務省と中国政府とのやり取りです。文書には“極秘”、“秘密”などと書かれ、内容のほとんどが黒塗り、つまり不開示です。

内部文書の一部
「邦人拘束事案について中国側の立場表明を受けたるとともに、(中略)我が方立場を強く申し入れたところ、やりとりの概要は以下のとおり」

中国側とのやりとりの部分は黒塗り。不開示の理由について外務省は、「公とすることにより他国との信頼関係が損なわれる恐れがある」などと説明しています。

拘束後、逮捕・起訴された日本人はいずれも実刑判決を言い渡されていますが、その一方で早期に解放された人物もいます。

安倍晋三 総理大臣(2019年当時)
「私自身も一日も早く家族のもとに帰れるよう強く要請してきた。無事に帰国され家族と再会できたことはよかった」

2019年に拘束された北海道大学教授の男性。外務省に勤務した経験もある人物で、拘束後、約2か月で“保釈”されています。

なぜ、早期解放に繋がったのか。開示された文書からわかるのは、この教授の解放について当時の安倍総理と李克強首相などのハイレベルも含め、約20回も中国側とやり取りしていたことです。

また、この北海道大学教授に関する交渉では、中国外交部側からの提案。「対応ぶりに付き回電願いたい」とも記されています。

一方、2018年に拘束され、解放されることなく懲役3年の刑期を終えた大手商社社員の男性の場合、日中のやり取りは少なくとも7回。外相レベルでの交渉のみが記されていました。

スパイ行為を行ったとして、早期解放されることなく刑期満了で帰国した鈴木氏は…

鈴木英司 氏
「政治的にいかに強く対応するか。中国の言うことをどれだけ聞くかという問題にもなってくる。リーダー同士で話をするとか、そういった形に持っていかないと解放は難しい」

アステラス製薬の幹部社員が拘束されたことで現地の日本人社会の中では不安が広がる一方、中国では反スパイ法を改正し、スパイ行為の定義を拡大する動きもあります。

鈴木英司 氏
「ふつうの国とは違う。民主主義国とは違う。中国という国の現状を理解するとともに、警戒心を持って、中国だけじゃないが、外国に行ってほしい」