松本市に75年前に設立された老舗の専門学校があります。
新型コロナの影響で、外国人留学生が激減し、大きな打撃を受けた3年間。
どう生き残りを図っていくのか?奮闘する女性校長、その戦略に迫ります。

先週行われた丸の内ビジネス専門学校の入学式。
新型コロナ対策が緩和されたこの春、およそ40人の留学生を迎えます。

(内川小百合さん)「20年後30年後の地球は皆さんの力にかかっています」

校長を務める内川小百合(うちかわ・さゆり)さん72歳。
運営する学校法人の理事長を兼務する経営者でもあります。

学校では今年度、ビジネス科や国際関係学科などで、150人あまりの学生が学びます。

前身である「丸の内タイピスト学校」が産声をあげたのは、終戦間もない1948年。

設立したのは、内川校長の母、明子(あきこ)さん、女性が活躍できる社会を願って開校しました。
(内川小百合さん)「女の人でも仕事を持たなきゃいけないって、ずっと言い続けた人で。タイピストというのは、女性が力を発揮できるし、女性向きの仕事でなおかつ格好よくて高給取りになる」
社会のグローバル化が進む中、34年前に留学生の受け入れを開始。

内川さんが母親から校長のバトンを託されたのは45歳のときでした。
(内川さん)「ここ私の仕事場で人に見せられないくらい散らかってるの」
専門学校の経営に加え、長野銀行とキッセイ薬品工業の社外取締役も務める女性リーダー。


1978年に県内で開かれたやまびこ国体にテニスの県代表として出場するなどアスリートとしての一面も持ちます。

校長に就任後、国際化をさらに推し進め、専門学校には毎年、60人ほどの外国人が入学。
卒業後は、松本地域で就職する留学生も多く、地域社会に人材を輩出してきました。
ところが、2020年、試練が訪れます。
コロナ禍の3年間に入学した留学生はわずか1人。

新型コロナの感染拡大による入国制限の影響です。
(内川さん)「忍耐の3年本当に。もう超苦しいです。このままもう2年続いたら、私いったん(学校を)閉めるかと思ったくらいで」
制限の緩和を受けて、この春は、およそ40人の留学生が入学し、明るい兆しも見えています。
その一方で、少子化の波が影を落とします。

国の2022年度の調査によりますと、全国の専門学校の生徒数は、およそ58万2000人。
前の年に比べ2万6000人ほど減りました。
(内川小百合さん)「本当に1990年ごろまでは繁盛した業界だと思います。92年に18歳人口減ってそこから冬の時代って言われて、ずっと冬の時代。今は極寒の時代」
「極寒の時代」をどう乗り越えるのか?
内川さんが目指すのは、高校を卒業する世代だけに依存しないスタイルです。
『教育付き学童』と銘打って、小学生の放課後の預かりと、英会話などの教室をセットにした新たなコースを設置。

専門学校の受け皿となる対象を大幅に引き下げました。
もう1つの秘策が、社会人教育へのシフトです。

(内川さん)「流れを作って、研修の流れを頭の中で考えて、実際にスライドはどういうものを作るかと」
今、ニーズが高まっているのが、企業が計画する社員研修の講師派遣なのです。
10日に行われた松本労働基準協会加盟企業の新入社員研修。

内川さんが講師を務め、およそ80人に社会人としてのマナーを指導します。
4月だけで、9つの企業・団体から、新人研修の依頼を受けました。
社員研修のニーズは、新人を対象にしたものだけではありません。
松本市のアルピコホールディングスは、管理職を対象にした研修の講師を内川さんに依頼しました。

部下とのコミュニケーション術を学ぶためです。
(内川さん)「今までは新入社員教育として社会人としての心構えとかマナーとかが主流でしたがこれから中間管理職向け幹部候補生、高度な企業研修がすごく必要になってくる時代」
さらに、内川さんの肝入りで2023年スタートしたのが、女性リーダー育成プログラム。
県内企業の女性管理職や将来の幹部候補生8人に自らの経験を交えながら、半年をかけて経営のイロハを教え込みます。

(内川さん)「私たちがやっていくことは管理することではなくてなんとかして、なんとかする。苦しんで苦しんで何かを決めて実行しましょうよっていうのがマネジメント」
(企業勤務30代)「いろんな目線で、改めて自分の会社のことを見ることができるのが学びの場です」(企業管理職40代)「すごく刺激を受けるというか、経営者目線というのはなかなか持てなくて」
(内川小百合さん)「大学に準ずる学校としての役割ももう終わりつつあると思う。私たちがやらなきゃいけないのは、やっぱりニーズに敏感に反応して、18歳だけをターゲットにするのではなくてもっと広く見ないといけないと思う」

世代や立場にとらわれない学びの場の提供。
そして、社会が求める女性リーダーの育成を目指して、内川さんの奮闘が続きます。














