2021年にアジア勢として初めてゴルフのマスターズを制した松山英樹(31)。連覇の期待が寄せられた去年のマスターズは2オーバーの14位タイ。その舞台裏と、苦悩の中で見つけた一筋の光を単独取材で明かした。

苦戦の理由は怪我だった。「ゴルフの状態は優勝した時と大きく変わらなかった」と振り返った松山だが、体は限界を迎えていた。プロデビュー時から怪我に悩まされてきた松山はこの年の大会1か月前に首の痛みを発症。「前の週までの感じだったらプレー出来ない」ぐらいの痛みをおして出場していたのだ。

「自信を持って打てるものがなかった。どれだけ痛くても4日間やるつもり」だった松山。前回王者として戦い抜いたことで二度とない経験ができたという。

「チャンピオンとして”勝ったことがある人”という雰囲気でパトロンに見られている気がして、その雰囲気を味わえたのは凄く大きかった」

「万全な状態で戦ってその雰囲気を味わいたかったていうのが大きい」と話す松山は昨シーズン最終戦まで欠場を繰り返すほど怪我に悩まされた。苦しいシーズンを過ごしたが、やまない雨は無い。ある若手選手の存在が松山のもとに一筋の光として差し込んだ。

その選手とは韓国のトム・キム(20)。米・PGAツアーでタイガー・ウッズ(47)以来となる20歳以下での複数回優勝を果たした新星である。試合で同じ組でラウンドするなど、彼を間近で見た松山は「自分のゴルフをすごく理解していて、自信を持っている。自分もその年齢の時はそうだったんだろうなと凄く感じた」。

松山は東北福祉大に在籍していた19歳の時にマスターズのローアマチュアに輝き、日本では史上3人目のアマチュア優勝。そしてプロ転向後は史上初のルーキーイヤーでの日本ツアー賞金王。前例の無い道を歩み続けた自らの若かりし頃にトムの姿を重ねていた。

アメリカに渡り今年で10年目。アジア勢最多の米ツアー通算8勝を果たした一方で、怪我に苦しみ、多くの失敗や苦い経験も味わった。

「自分が今ブレてやっていたものをしっかりと自分がブレずにやっていければと思っている。そういうものを取り戻すことができたら経験も踏まえてもう一つ上の段階に行けるんじゃないかと思ったので、やることが固まった感じがある。今年のマスターズはやり切ったと思いたい。勝つことが目標だが、それ以上に全てを出し切って終わったと言いたい」

現地での練習ラウンドを終えた松山はTBSの取材に「去年より首の状態がかなり良い状態でオーガスタに来られたので楽しみ。2年前のように少しずつ自信を持てる状況にもっていければ(勝てる)チャンスはある。予選2日間でいい位置で週末を迎えて、4日間通して優勝を目指せるように頑張りたい」と話した。2度目のグリーンジャケットへ、マスターズ王者としての経験に若手の頃の気持ちを携え12回目の夢舞台に挑む。