30代女性の悩み 妊娠・出産か仕事か 「授かり方にも多様性を」

山本 恵里伽キャスター:
健康な女性で卵子凍結を選択する人が増えているようです。日本受精着床学会の調査によりますと2021年、都内17施設で健康な女性が妊娠・出産に備えて卵子凍結した件数は1135件。これはがん患者が治療の影響を避けるために行った136件と比べると8倍以上の数字になっているんです。
また調査を行った医師によりますと今年は4000件を超えるのではないかという予測も出ています。

卵子凍結を選択する理由について本田さんは
「考える時間をちょっと延ばしたい」とおっしゃっていました。
そして、実際に卵子凍結をした結果、「焦りや不安がなくなった。子どもを産みたくなった」と考えにも変化があったようなんです。
小川彩佳キャスター:
私の周りにも卵子凍結を選択した友人がいますけれども、これまで妊娠が可能な時期というのが限られる中で追い詰められていた。それがほっとしたと言っていましたね。
データサイエンティスト 宮田裕章 慶応大学医学部教授:
選択肢を開くということに関して私自身も医学部所属なのですが、医療の専門家も当事者に寄り添って考えていくということは、やはりとても大事なことだと思います。
山本キャスター:
私は今年で30になる年齢で、実際に友人との会話でも頻繁に話題に上がるようになっています。将来的に子どもを授かりたいという思いはあるけども、今ではない、というのが正直なところで、そういう中で、卵子凍結という選択肢を視野に入れるというのも増えているのかなと感じますね。
小川キャスター:
30代前半というのは、一番、妊娠・出産と仕事をどう両立していけるだろうかと悩んだ時期で、まさに注目していました。
山本キャスター:
選択肢として考える人は増えているようにも感じますし、環境も少しずつ変わってきているようです。自治体や企業による支援の動きも出てきいます。

東京都は、これまでがん患者らを対象に最大30万円補助していますが、今年度から健康の女性にも支援を拡充します。
企業で見てみると、メルカリは最大200万円の補助、サイバーエージェントは最大40万円の補助をするということです。
小川キャスター:
こうした社会の変化についてどう感じますか。
宮田教授:
判断というものに時間を持つことができる、という一方で、コストがネックだったのでそれを開くための支援というのはとても有用だと思います。
さらに科学的な知識の中で、どう判断をしていけるかですね。
例えば、卵子凍結したとしても凍結によってやはり多少質が落ちる部分があると。その加齢を経た、今の自分の卵子による出産と、どちらを取るかみたいなところは、それぞれの状況・個々人によっても違ってくると思いますので、そうした科学に基づきながら1人1人の選択をしていけるといいのかなと思います。
小川キャスター:
科学的な知識が、一般的に普及しているとは言い難い中で、パートナーや家族など周りの方の理解というのが必要なことでもありますよね。
山本キャスター:
実際に卵子凍結をした36歳の女性の方は「パートナーに卵子凍結ではなく自然な形がいいと言われている」こんな声もありました。
小川キャスター:
子どもは自然に授かるものだという意識のある方もいらっしゃると思います。
宮田教授:
この場合の状況・背景に何があるか詳細はわからないんですが、字面からはおそらく偏見というのか、ある種の思い込みによって、今の科学の選択肢を中立的に見ていない可能性がありますよね。そういったバイアスを取り除いていくということは、凄く必要ですし、さらには選択的シングルマザーに対しても、やはり制度が整っていないと。今回の「卵子凍結」の背景にいろいろな問題があって、女性たちの生き方というものも、すごく限られたものにしているので、その背景の要因も取り除いていく必要があるのかなと思いますね。
山本キャスター:
授かり方にも多様性があっていいのかもしれません。
卵子凍結は、妊娠や出産を保証するものではありません。日本生殖医学会の見解では「採取時の年齢は36歳未満が望ましい」としています。また日本産科婦人科学会は「当事者の選択に委ねられる事項で禁止も推奨もしない」ということでした。
小川キャスター:
産みたいときに産めないという環境があるとしたらそれをどう変えていくのか。ここにしっかり目を向けていく必要がありますね。