世界的な音楽家、坂本龍一さんの急逝を悼む声が世界に広がっています。先月28日、71歳で亡くなりました。坂本さんが世界に数多ある“音楽”を選曲・監修した音楽全集があります。17巻にわたる全集のうち、日本の伝統音楽に焦点をあてた14巻については、幻の世界限定100部オリジナルエディションがあるのです。

その貴重な本のブックカバーに選ばれたのは、富山の“奇跡のまゆ”から作られる「しけ絹紙」だったのです。そこにこめられた思いとは…。
富山県南砺市の「松井機業」。通常、蚕は1頭がひとつのまゆをつくりますが、まれに2頭の蚕がつくり出す奇跡のまゆがあります。

この奇跡のまゆからつむいだ糸で織り上げた伝統的な絹織物が「しけ絹(ぎぬ)」です。2頭の蚕が同時に糸を吐いて作るため太さがふぞろいになり、それがなんともいえない味をつむぎだすのです。

松井産業は「しけ絹」を和紙と張り合わせた「しけ絹紙」を一貫生産する唯一の会社です。6代目をつとめる松井紀子さん。「しけ絹紙」を通じて坂本龍一さんと関わりました。
松井機業6代目 松井紀子さん:
「こちらの本のブックカバーにお使いいただいたことがあります。夢のようなお話をいただいてすごく感激したのを今でも覚えています」

松井さんは2015年、日本橋三越が企画したイベントを通じて、坂本さんが選曲、監修した音楽全集「コモンズ・スコラ」シリーズの世界限定100部のブックカバーを制作しました。
使ったのは、“奇跡のまゆ”からつくった「しけ絹紙」です。
松井機業6代目 松井紀子さん:
「(坂本さんが)こういう素材があるってことを初めて知ったからすごく感動していたよというふうに聞いています。要望はそんなになかったと思います。ただ、サインでにじまなければいいっていうことを言われていたような記憶はあります」

「しけ絹紙」のブックカバーに坂本さんは感動していたといいます。