4月1日はエイプリルフール。こんな優しいウソなら、エイプリルフール以外の日でも許されるのでは? 建物のそばにぽつんと立つバス停。実は、このバス停にバスは来ないのです。

◆「うちに帰りたい」と繰り返すお年寄り

RKB若松康志「こちらのバス停、時刻表が一切書いていません。それもそのはず、“バスが来ないバス停”なんです」

このバス停が設置されているのは福岡市城南区にある高齢者施設です。入所者の多くは認知症があり、施設側は「家に帰りたい」という訴えに頭を抱えていました。

ケアタウン茶山 植木とみ子施設長「『帰りたい、帰りたい』と言うお年寄りが何人かいらして、どうしたものかなと」

そんな時、このバス停が問題を解決してくれます。

ケアタウン茶山 植木とみ子施設長「バス停を見れば『これでおうちに帰れる』と思ってくださればいいと思ったんです。『そうだね、帰りたいんだね、じゃあ一緒に帰りましょうか』って。何か自分は受け入れられているという安心感につながって、もう別に帰らなくてもよくなるんですね」

◆バスを待つ間にいつの間にか帰宅願望が消えてゆく

バス停は西鉄バスが無償で提供してくれました。設置から3か月あまり、入所者もバス停に心を開いています。

ケアタウン茶山 木村みわさん「この席に(入所者に)座っていただいて、こうのぞき込む感じで、『いっちょん(ちっとも)来んねー』『バスが来んですねー』と言って。『バスに乗って、どこに行きますか?』という話もして」

10分ほど雑談をしていると、入居者の心境が変化したといいます。

ケアタウン茶山 木村みわさん「(バスが来ないので)『どうしますか?』って言うと、『帰ろう』って言われたので、『じゃあ帰りましょう』と立ち上がって」
Q.その時には帰宅願望はなくなっていた?
「多分、忘れられていると思います」