東北大学災害科学国際研究所の今村文彦所長が31日、退任します。退任を前に記者会見が行われ「所長を退任してからも津波と避難などに関する研究を続けていきたい」と述べました。
東北大学災害科学国際研究所 今村文彦所長:
「大学の教員として40年弱ですが、想像していなかった役割でした。専門家としての(知見)の提供もありながら、現場の課題や状況を把握して課題整理するかというのがとても重要であり、9年間の所長の役割だったかなと思います」

津波のメカニズムなどを専門とする今村文彦所長は東北大学災害科学国際研究所の2代目の所長として2014年に就任。「災害科学の深化」を掲げ東日本大震災を教訓に災害の対応を社会学や医学など幅広い分野から総合的にアプローチする研究を進めてきました。

東北大学災害科学国際研究所 今村文彦所長:
「思いは1つでした。震災に対して何ができるのか、あの被害を繰り返さないという思いがあった」
今村所長は被災地の復興にも尽力してきたほか、国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組」の取り組みも推進してきましたが、その裏には、研究者としての「反省」がありました。
東北大学災害科学国際研究所 今村文彦所長:
「(東日本大震災の津波は)当時のハザードマップの想定よりもはるかに大きかった。見た瞬間に貞観津波だなと思いました。そのときは、堆積物を調査していて、ただその調査結果は評価とかハザードマップには当時まだ反映されていなかったんですね。そこが非常に愕然となりました」

また、時の経過とともに新たな課題も感じているといいます。
東北大学災害科学国際研究所 今村文彦所長:
「震災12年経つと記憶が薄れて防災の意識が低下してしまっています。新たにほかの地域から来たり、生まれてきている世代もいますので、それをいかに維持して伝えるかということが課題になります」
退任後も津波情報と避難についての研究や伝承を続けていきたいという今村所長。
東北大学災害科学国際研究所 今村文彦所長:
「現場に行ってデータをとって解析をして分析をするというところが、(現場が)目の前にあるが若い先生や学生にお願いして自分では直接はできなかったのが心残りで、4月からできればいいなと」
4月からの後任には、災害公衆衛生学を専門とする栗山進一教授が就任する予定だということです。