「(中国にとって)ロシアの脅威が完全になくなるのは困る」
中国にとって仲裁役を担う目的は外交上の成果だけではない。戦争を継続することでウクライナの悲劇が続くことは言うまでもないが、ロシアの国力も確実に弱体化する。中国とロシアはかつて対等に友好関係を築いていたが、現在は経済的に中国がロシアを圧倒している。更に、ウクライナ戦争後、その力関係は決定的なものとなっている。

中・ロ貿易額は前年比3割増しの過去最大。ロシア内で販売される自動車の3分の1は中国車。ロシアのアマゾンと言われるネット通販『オゾン』が扱う商品の90%は中国製。モスクワの街にはメイドインチャイナが溢れ、欧米の製品は中国経由で入ってくる。ロシアのエネルギーは安く買いたたかれる一方で、中国製品を大量に輸入する。ロシアの中国依存はとどまるところを知らない。この中・ロの格差は中国にとっては喜ばしいことかと思うと、そう簡単な話ではないようだ。中国にとってロシアは強すぎても弱すぎても具合が悪いらしい。

日本総研上席理事 呉軍華氏
「ウクライナ戦争の終わり方はわからないが、もしかしたら(中国にとって都合がいいのは)朝鮮戦争みたいなバージョンがいい…。完全な平和ではなく…。朝鮮半島は今も休戦状態でしょ。
そういう状態が場合によってはいいかも…。欧米がウクライナに気を取られ続けるでしょ。(アメリカの目が)中国にだけ向くのは一番避けたい。」
元防衛大臣 森本敏氏
「アメリカとの関係でみると、ロシアの脅威が完全になくなるのは困る。アメリカはロシアの脅威があるので今かなりヨーロッパに関与している。この脅威がなくなると、インド太平洋に向いてくる。それは中国にとって利益にならない。だから、ほどほどに(脅威が)維持されて、中国の思った通りになるくらい依存度がある状態でいてくれるのがいい…」
(BS-TBS 『報道1930』 3月21日放送より)