後継者がおらず休業状態だった長野県上田市の酒蔵が、新たな体制で事業を再開し、できあがった日本酒がお披露目されました。


上田市の土屋陽一(つちや・よういち)市長に、今月できたばかりの日本酒を届けたのは、山三酒造(やまさんしゅぞう)の荻原慎司(おぎはら・しんじ)代表です。


創業は大政奉還があった幕末・1867年と歴史ある酒蔵ですが、先代が高齢になり、後継者もおらず、2015年から酒造りができなくなっていました。


(荻原さん)「瓦なども傷んでしまっていて、壁も崩れていたのを今なおしている最中ですね」


おととし・2021年に経営を引き継いだ荻原さん。佐久市出身でパチンコやパチスロ機の卸売業を営んでいます。


友人の紹介で山三酒造の現状を知り「地域の伝統を絶やしたくない」とこれまでとは全く異なる業界に挑むことにしました。

(荻原さん)「先人たちが試行錯誤しながら作ってきた中で、なかなか思い通りにいかないなと思ったのはありますね。誰かが手抜きをすればすべての工程が無駄になってしまうので、ラベルの一文字一文字まで手抜きがないようにというのは心がけています」

2月に酒の仕込みを再開し、今月完成したのが、この3本です。


先代から引き継いだ「真田六文銭」、そして「山三(やまさん)」という新銘柄です。


酒造りを担うのは杜氏の栗原由貴(くりはら・ゆうき)さん。東御市産の酒米を使い、手作業で丁寧に仕込むことを大切にしています。

(栗原さん)「こっちが麹室といいまして、機械に頼らない手作りでの麹づくりをしています。人間の感覚だけで室温とその時のコメの状態で温度調整をして、そうすることでふっくらした麹が仕上がるという特徴があります」


さらに、栗原さんがこだわったのは「しぼりたて」。


「しぼりたてのお酒って本当においしいんですよね。なかなか酒を造っている人にしか味わえないようなもので、とにかくそれを皆さんに味わってほしいなと思ってしぼったお酒をすぐに瓶につめて届けられるような手順を踏んでいます」


こうして出来上がった新たな酒は果実感のある味わいが特徴で、日本酒をふだん飲まない人にもおすすめだと話す荻原さん。

再始動した酒蔵が目指すのは・・・


「この上田の地から世界に発信できるような酒造りを心がけてやっていきたい」