1年の半分をアラスカで過ごす写真家の松本紀生さん。30年近くにわたり、現地の壮大な自然を撮影し続けています。

長い活動の中で感じる”自然の変化”―

(写真家・松本紀生さん)
「最初行った頃はそうでもなかったんです。自然きれいだなって、写真と映像だけに集中できたんですけど、だんだん自然が変わってきて、ここ数年で特に温暖化の影響が至る所でみられるようになってきて」

コロナ禍でしばらく現地での活動が途絶えていた松本さん。去年の夏、約2年ぶりにアラスカへ渡った際に訪ねたのが、先住民が暮らす西部の村・ニュートクです。

(松本さん)
「ニュートクでは、温暖化の影響で地盤の下に眠っている永久凍土という氷の層がどんどん溶けていっている。そのせいでその上に建ってる建物とか電柱が大きく傾いて来ています。それだけではなくて、永久凍土が緩んでくるものだから、川の水に浸食されてしまって村の土地が川に飲み込まれてしまっている。村が元々小さいですから少しだけ村の沿岸が削られただけでも、もう生きる場所がなくなってしまう、村の中で。そんなところまで追いつめられてしまっています」

温暖化で土壌が変化し、住民たちは移住を余儀なくされているといいます。

(松本さん)
「その村を訪れて感じたのは、彼らは何も悪いことはしてないんですよね。車も無いしそんなに石油を使ってるわけではありません。自然に寄り添って暮らしてきた人たちが、なぜか温暖化の最前線に立たされて、生きるか死ぬかの所に追いつめられてしまっている。誰のせいかと言えば僕のせいでもあるんです。僕らのような先進国で暮らしながら何も温暖化について一生懸命頑張っていない、僕たち大人のせいだなと強く感じて、なかなか現地の人に、詳しい話を聞くのがつらかったですね」

松本さんは、自然のあり方を見つめ直すことこそ、豊かな自然を守ることにつながると話します。

(松本さん)
「アラスカの自然をずっと見ていて、つくづく感じることなんですけど、自然界っていろんな生き物たちや環境が繋がり合って支え合って、成り立っているんですね。それがアラスカで過ごしていくうちによく分かってきたんです」

“つながり”を壊さないために、できることは-

(松本さん)
「一番は感謝すること。その感謝はどこから生まれるかと言うと、一旦立ち止まって考えてみることなんですよ。自然が無いと人間って暮らしていけない、そういうことに気付くと自然に感謝の気持ちが湧いてきて、自然を大切にしようと思えてくると思います」

子どもたちに伝えたいことは-

(松本さん)
「お子さんたちには普通に自然を感じてもらって、きれいだな、良いなと思ってもらえたらそれだけでいいと思います。そういう感情が残ってるだけで、もし大人
になった時に環境問題のことを耳にしたら、こういう自然守りたいなって自然に思えてくると思うんですよね。だから今のうちにお子さんたちは、自然に普通に心を開いて、自然を感じてくれたらいいなと思います」

これからの活動について-

(松本さん)
「これからもずっと僕はアラスカを撮り続けていきたいです。30年くらいアラスカを撮り続けていますけど、全然撮り尽せてないんです。一生かかっても撮り切れないと思ってます。そんな対象に出会えるって、こんな素敵なことはないんですよね。だから自分が一生かけられるものが見つかっているんだから、それを手放すことなく、それに向かって一生懸命できる限り、この活動を続けていきたいと本当に思っています」