コロナ対策の“カギ”「パキロビッド」が日本であまり使われない理由

コロンビア大学附属病院 加藤友朗 医師
「移植の患者は免疫抑制状態ですから、重症化の可能性が高い。コロナだとわかった時点で、すぐにパキロビッドを飲むということはやっています。65歳以上であれば、陽性だった段階でパキロビッドを飲むということを当たり前のようにやっている。それから考えると日本ではかなり少ない」
日本では2022年2月に特例承認されたが、2月28日時点で使用した患者は約10万人に留まっている。
コロンビア大学附属病院 加藤友朗 医師
「特にこれからマスクをやめるとか、5類移行するときにかなり安全な材料となる。すごく不安になってるのは、コロナで有効な薬もないのに、ガードを下げて広がったときに、たくさんの人が亡くなるのではと。その辺がかなり懸念点としてまだ残ってると思う。有効な薬があるということがわかると、安心していろんなことができると思う。パキロビッドはそれを確保できる薬だと思う」
なぜ日本では、あまり使われていないのか…。
2020年、千葉大学病院。ヘリコプターから運び出されるのは、50代の新型コロナの重症患者。

この病院ではコロナ専用のフロアを2つつくり、これまで1000人以上の患者を受け入れてきた。コロナの流行が始まって3年たった今。
ーー病室の使用状況は?
阪田史子 師長「ゼロです」
2つあった専用のフロアを1つにし、最大56床あった病床を5床に縮小した。
この5床についてもコロナがインフルエンザと同じ5類に移行する5月には撤廃を視野に検討している。
千葉大学病院でも外来患者にパキロビッドが処方されている。しかし、わずか9例に留まっているという。

千葉大学病院 坂尾誠一郎 医師
「このお薬は特例承認という形で、全例登録が必要なうえ、文書による同意も患者さんから取る必要がある」
パキロビッドは2022年2月、特例承認という簡略化された手続きで承認されたため、同意書のほか、投与期間中は医師による健康確認が必要となる。
厚労省が200万人分を確保し、医療機関や薬局に無償で譲渡されている。千葉大学病院では5人分までという在庫制限がある。
今後はその値段も課題となる。
3月に決まったパキロビッドの価格は、5日分で約9万9000円。
政府は5類移行後も当面は公費負担を続け、患者の窓口負担を無料とするとしている。だがこの特例措置がなくなった場合、患者が一部負担することになる。
そして、最も大きな問題が同時に使えない薬が細かく定められているため、それを確認し、処方するまで時間がかかることだ。
千葉大学病院 坂尾誠一郎 医師
「千葉大学病院では患者に薬が外来で届くのに、2時間から3時間ぐらいかかってしまう」
大学病院ですら、大変だという飲み合わせの確認作業をどうしていくかがカギだという。
千葉大学病院 坂尾誠一郎 医師
「忙しい発熱外来のクリニックの先生が、例えば初めて来た患者に、薬を全部チェックして、それで飲み合わせが大丈夫か、安全性を確認するだけの、時間がなかなか取れない。
間に入ってくれる薬剤師とかが、一般のクリニックの診療においても、手助けができるような体制になる。あるいは薬の名前を全部入れたら、大丈夫だというようなオンラインシステムができれば、もっと普及するのではないか」
日本とアメリカで薬の普及に大きな差ができる理由の1つが薬剤師の存在だ。アメリカでは薬剤師も薬を処方でき、2022年7月からパキロビッドが選択肢の1つに加わった。