普天間基地の辺野古移設反対などを訴えるためワシントンを訪れていた玉城知事が3月11日に沖縄に帰ってきました。訪米の成果と見えてきた課題について考えます。

アメリカの首都、ワシントンDC。歴史を感じさせる街並みが残るこの町は、ホワイトハウスや連邦議会などアメリカの政治・経済・外交の方針が決まる中心地です。

現地時間の今月6日、ワシントンに降り立った玉城知事。

玉城知事「3年5か月ぶりの訪米ですのでこの間の国際情勢、沖縄における米軍基地を中心とした課題の拡大などについて沖縄側の実情をしっかりと伝えて、アメリカ側の考え方も情報収集したい」

新型コロナの影響でおよそ3年半ぶりの訪米となった今回。
普天間基地の辺野古移設反対や沖縄の基地負担軽減に加え、今回はPFAS汚染の問題についても、新しい顔ぶれとなった政府関係者や連邦議員らに現状を訴えることが大きな目的です。

しかし、国務省・国防総省の担当者との面談では“辺野古が唯一”という「日米安全保障協議委員会=2プラス2の合意を確認している」とされただけで、具体的な議論には及ばず、その温度差を感じさせるものとなりました。

一方で滞在期間中、玉城知事が最も上機嫌な表情を見せたのが連邦議会議員との会談の後でした。

上院・下院両院で6人の議員・補佐官と面会した玉城知事はPFASの問題について議員らから「連携して取り組みたい」と前向きな回答があったとして手ごたえを示しました。

このほか現地の大学で開かれたシンポジウムに登壇した玉城知事は、台湾有事を念頭に「防衛力の強化以上に平和的な外交・対話による緊張緩和に取り組み有事を起こさない努力をするべきだ」と訴えました。

参加した学生はー

参加した学生「台湾有事について、沖縄だけの問題ではなく他の国々にも理解し解決に向けての道筋を考えるべき」
参加した学生「これまで、沖縄における有機フッ素化合物に関する情報などについてはあまり知りませんでした。日米両政府がお互いに沖縄についてもっと考えるべきだと思う」

就任後3度目となる訪米行動を終えた玉城知事。今回の成果について尋ねられるとー。

玉城知事「(前回)3年前はやや冷ややかだった感触が、今回は新しいテーマ、PFASにしろ台湾有事にしろ、沖縄側が積極的に働きかけていかなければならないという感触を得たのが今回の訪米だった。私の考えを直接説明できたことは大きな成果であったと考えています」

【記者解説】

玉城知事は現地で活動した4日間、朝から現地の記者や有識者との懇談に出席するなど精力的に活動しました。ただ今回訴えた3点について具体的に期待されるような成果が出せたのかというとやはり難しかったというのが現状です。

今回の訪米の中で、アメリカ側から最も注目が高かったのがPFAS問題です。玉城知事が会うことが出来た連邦議会議員の1人、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員は与党・民主党のホープで直接会うこと自体が難しいとされる人物です。玉城知事とオカシオ=コルテス下院議員の面談時間は当初15分の予定でしたが、最終日には40分あまり面談するなど沖縄への興味を感じさせるものでした。

オカシオ=コルテス議員が特に高い関心を持ったのが、アメリカ国内でも議論が進むPFAS汚染の問題でした。玉城知事が訴える在沖米軍基地内への立ち入り調査の必要性などについては前向きな回答を得ることができた一方、普天間基地の辺野古移設「反対」、沖縄の基地負担軽減などの解決については具体的な議論には至りませんでした。

アメリカ国内で高まる“中国脅威論”を背景に、玉城知事の『平和外交』という訴えがどこまで現実的なものとして伝わったのかは不透明です。今回の訪米で、基地負担の軽減につながる法案やアメリカの国防予算などに、沖縄の考えを反映してもらいたい考えだった玉城知事。沖縄の思いや現状を直接アメリカ側に伝えるいわゆる草の根の活動を経た今、帰国後の継続的な情報提供やアプローチが重要となります。