首都キーウには去年の侵攻開始の動きを現地で取材した増尾さんがいます。増尾さん、市民の皆さんは1年という節目をどのように受け止めていますか?

ウクライナの市民の皆さんにとって、1年という節目はあまり意味を持った日ではないのかもしれません。

市民の方々に話を聞くと、「ロシアによる軍事侵攻の出口が全く見通せないなか、きょうはただ、365日目という通過点にしか過ぎないんだ」と話します。

夫を亡くしたオルガさんのように、日常のささやかな幸せすら一瞬のうちに奪われ、そして、破壊された生活を立て直そうとするたびに、また新たな別の攻撃が加えられる。

ウクライナの人にとって、この1年間というのはそういった恐怖と苦しみの連続で、それが1年たったところで、変わることはないんだろうと思います。いつ攻撃に巻き込まれるか分からないなか、町に戻る人の姿が少しづつ増えてきましたが、聞かれるのは「ここで日々の生活を営むことが、自分たちにできる抵抗だ」という声です。

1年という節目は、むしろ私にとって、抗い続けるウクライナの人に思いをはせ、そして、不条理を見つめて改めて考える、そういった一日にしなければならないと思いました。