コロナ禍が新たな局面を迎えようとする一方、経済では原材料費の高騰が続いています。「簡単に値上げできない」不安と葛藤を抱える大分県内の企業を取材しました。

ストレートにロック、水割りなど、さまざまな楽しみ方で人気の「麦焼酎」。この県の特産品が今、ピンチを迎えています。

(縣屋酒造・森栄司社長)「これが主力商品『安心院蔵』の原料、15%ぐらい上がっている。痛いですよ、本当に痛いですよ」

江戸時代の1712年に創業した宇佐市の「縣屋酒造」。麦焼酎や日本酒のおよそ8割を関東や関西方面に出荷しています。しかし、この1年で原材料の大麦や瓶、ラベルなどほとんどの価格が高騰。平均で13%も上昇しているといいますが…

(森栄司社長)「13%上がったから製品を13%上げてくださいとはなかなか言えない。大手から値上げという声が出るまでは、単独で中小企業が値上げしますというわけにはいかない」

苦渋の決断で10%アップへ

値上がり分を切り詰めるため、包装を簡素化するなどの対策を講じてきましたが、もはやそれも限界に… 大手に追随し、3月から10%値上げすることを決めました。

(森栄司社長)「もう体力の限界ですもんね。従業員の生活もあるし、資材が上がるのが止まってくれればなと痛切に感じている」

県の調査では県内企業の7割が原材料費高騰の影響を受けている一方、値上がり分を商品価格に反映できていると答えた企業はおよそ4割にとどまっています。

(広瀬知事)「負担を分かち合うことが一番大事」

こうした状況を受け、県と国は2月、経済団体と協定を締結。中小企業が値上げしやすい環境を作って、ゆくゆくは賃上げにつなげるのが狙いです。

(県経営者協会・杉原正晴会長)「中小企業の賃上げを後押しする武器になると期待している。価格転嫁を妨げる要因の排除まで踏み込んで欲しい」

また、取り引きのある企業同士で「共存共栄」を図る動きも広がっています。