ーー市場は年内には利下げに転換という期待を常に持っているが、パウエル議長はインフレの先行きには厳しい見方を示したと見ていいか。

慶応義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
やはり市場はソフトランディング(軟着陸)を望んでいて、求人件数が減って来れば賃金上昇率も減ってきて大きな失業者を大量に出さないで上手くインフレ率が下がると思っているのですが、男性の求人件数が1100万件もあって、まだ企業の活動がすごく旺盛なわけです。サービスなどいろいろなインフレ率が高いですから、そこから見るとそう簡単にインフレ率が下がってくるかというと慎重にならざるを得ない。私は利下げはないのかなと思っています。

ーーアメリカの個人消費支出の物価指数を見てわかることは何か。
慶応義塾大学 白井さゆり教授:
コアのところ、エネルギーと食料を除くとあまり下がっていないということと、その中の非常に大きな項目であるサービスがほとんど横ばいになっています。ここに家賃やそれ以外のサービスが入っていますが、家賃は今住宅不足ですから、そんなに簡単に下がりません。一方、それ以外のサービスは労働集約的なので賃金上昇がそのまま転嫁されやすいので、この部分が下がってこないとインフレ率が2%に下がっていくという兆しが見えにくいです。
ーーソフトランディングで景気がいいということはありがたいことだが、景気がいいということは逆に言うとインフレが下がらないということだ。
慶応義塾大学 白井さゆり教授:
それがサービスなどに効いてきてしまうので、過去に前例がないほどの求人の多さです。アメリカの企業が結構まだ利益もいいですし、好調だということなので、ここがもっと利上げが必要になる可能性が高いのかなと思います。

アメリカが景気後退に陥らずにソフトランディングできるかどうかに注目が集まる中、停滞する世界経済に変化の兆しも。IMF(国際通貨基金)が1月31日に公表した世界経済見通しでは、今年の世界全体の経済成長率を2.9%と3か月前より0.2ポイント引き上げた。上方修正の背景にあるのは、物価高の鈍化や中国の経済活動の再開だ。今回の修正でアメリカを0.4ポイント、中国を0.8ポイントも上昇させた。
ーーマイナス成長はあまり心配しなくてもいいのではないかという感じになってきたのか。
慶応義塾大学 白井さゆり教授:
二つ理由があって、一つは中国が急に人の移動が激しくなって消費が回復しつつあるので中国頼みというのが大きいのと、もう一つはエネルギー価格が予想以上に下がってきているわけです。それで消費者も急に安心感を取り戻しているというところです。エネルギーは経済が減速しつつあるということと、中国のエネルギー需要が低迷していたということもあるので、これは今後どうなるかというのはわかりにくいところです。