巡視船「くろかみ」引退へ、最後の訓練
しかし、巡視船くろかみは老朽化に伴い、任務をとかれ解体されることに。小野さんは異動が決まり、潜水士になる前に徳山海上保安部を離れることになりました。
去年11月20日。背中を追った先輩潜水士との訓練もこの日が最後です。
小野さん「前回できなかった船首とはんや、きょう初めてやる障害ドルフィンという訓練があるので、結構緊張しています」
「きょうはくろかみとして最後の潜水訓練になります。最後までしっかり気合を入れて安全に行ってください」
現場で何が起きても対処できるよう、訓練はあらゆることを想定し、さまざまなメニューが組み込まれます。
先輩潜水士の冨田隆さんが、小野さんの結索をチェックします。

冨田さん「まだ緩いな。こっちはいいけど・・・。前回の研修前に比べたら、もう全然格段とアップして帰って来ていると思います」

続いて障害ドルフィン。ベテラン潜水士でも緊張する、1位、2位を争うほど過酷な訓練です。ボンベやマスクなどが外れたり、故障したりした場合を想定した訓練です。一つ一つ船に上がって装備を外しながら、往復80メートルを6周半泳ぎます。空気ボンベを外したらラスト1周。
終われば休む暇なく船首とはんです。船首までの高さは5メートル。先輩潜水士はするするとのぼっていきます。小野さんの悔しかった記憶がよみがえります。登れなかった特別訓練以来の挑戦です。
小野さん「練習はしましたけど、きょうできないと意味ないんで頑張ります」

ついに船首まで登り切ることができました。実は小野さん、障害ドルフィンで1周多く泳いでいました。
潜水士・木谷隆二さん「間違えたやろ1本。もったいない」
坂井さん「訓練やから許されるけど、現場だったら違うことやってることになるから。しっかり初めの内容聞いとかんと」
木谷さん「彼なりに努力をしてるはずですし、ただ、細かいところなんですが、まだ足りないところは見受けられます。そこをしっかりつめていけるようにならないと、一人前の潜水士にはなれないと思うので、今後の成長に期待したいと思います」
冨田さん「夜に海の上で一人で練習していたのを見ていたので…。先輩が見てないところでこっそり練習していてちょっと嬉しいところもありました。分からないところも聞いてくれるので、嬉しいですね。今後に期待して、一緒に頑張っていきたいです」
潜水士班長・安達健太さん「僕らが相手にしてるのは自然なので、毎日同じ状況ではなく、何が起きるかわかりません。どんなことにも耐えられるような、強靭な心と体力をつくるために今日の訓練はあるので、緊張しながらも完泳できたのは、素晴らしいことですね」
船首とはんに成功した小野さんは。
小野さん「ちょっと安心しました」
先輩潜水士からのサプライズ訓練!
ここで、小野さんにサプライズが。
坂井さん「まだ時間あるけどどうする?mix恒例の10キロ立ち泳ぎやるか?
木谷さん「現場は10キロだよ。研修の2倍だ」
小野さん「やります。準備します」

10キロのおもりを持って、先輩潜水士とともに立ち泳ぎに挑みました。「ナイス」「よくやった」先輩潜水士から声が掛かりました。
坂井さん「きょうはサプライズで10キロを用意したんですけど、やっぱり現場って何が起きるかわからないので、こうやって10キロこなしたことはまた一つ自信になったと思います」
小野さん「自分は水面に錘がついてたんですが、先輩二人は水面につけずにやってたんで、頑張らないといけないなと思いました」