海上保安庁の潜水士になりたいと夢を追う21歳の小野颯太さん。夢をかなえるため訓練に励む様子をこれまでも紹介しました。

潜水士への道は険しく、大きな壁が立ちはだかります。そして今回新たな局面を迎えました。

山口県周南市の徳山海上保安部に所属する巡視船くろかみ。海難救助のスペシャリストの潜水士が乗り込む潜水指定船です。乗組員の一人、小野颯太さんは潜水士に憧れ、海上保安官になりました。

小野さんは北九州市出身。初めての勤務が巡視船くろかみでした。くろかみでは主に乗組員の食事作りや会計の仕事をしています。

小学生で闘病、「潜水士になりたい」

「潜水士になりたい」という夢を抱いたきっかけは、小学生の頃、ペルテス病での入院生活の時でした。ペルテス病は大腿骨頭が血行不良で骨が壊死、変形する病気。病と闘う中、「海猿」のDVD を見て憧れを抱いたそうです。

母・智予さん「運動もダメ、部活もダメ、全部ダメ、かわいそうでした。水泳だけいいよって」

唯一許可されたのが水泳。夢へ突き進むように水泳に打ち込みました。

小野さん「病気が治ったら、こうやって人を助ける仕事がしたいなと」

病気を乗り越え念願の海上保安官に。そして、潜水士への階段を上り始めます。

潜水士は狭き門―潜水研修に向け特別訓練

潜水士は海上保安官の2パーセントたらずの狭き門。潜水士になるには、国家資格取得のほか、海上保安大学校の潜水研修が必須です。潜水研修へは年1回、管区で開かれる選考会があり、小野さんは研修への切符を手にしました。

去年8月。潜水研修を前に徳山海上保安部で特別訓練が行われました。潜水士が救助に向かう海難現場は、常に危険と隣合わせ。水中での基本の動きをたたき込みます。

まずは、水中でロープを結ぶ結索訓練です。
小野さん「オッケー」
潜水士・坂井涼一さん「また下で索(ロープ)、離したろ?索を離すなって言うたやろ」
小野さん「頭の中で想像してても、実際水中に入ると、混乱して、なかなかうまくできないので、しっかりアドバイスを忘れずに次につなげたいです」

次は、船首から吊り下げられたロープをよじ登る“船首とはん”。この日が初めての挑戦でした。ウエットスーツが身体を締め付け、思うようには動けません。多くの潜水士が最初にぶち当たる壁です。何度も挑戦しましたが、この日は登れませんでした。

さらに、立ち泳ぎ。両手で持った重りを水面につけないように泳ぎます。小野さんの一番苦手な訓練です。