都会のウナギが むしろ他の河川より健全に生きている点に注目
細谷さんは2013年、ニホンウナギを絶滅危惧種に指定した人物だ。
「たまたま環境省のレッドデータブック淡水魚・汽水の部会の座長をさせていただいたときに、ニホンウナギを滅危惧1B類、カテゴリーから2番目に指定しました。様々な抵抗がありましたけれども、その後追いであの国際自然保護連合IUCNが、国際的にもこれを同じカテゴリーにしました。こんな絶滅危惧種がまさか健全な形で大阪のしかも道頓堀川にいるとは正直驚きだなと思います。」
年末、カナダではCOP15が開催され、まさに生物多様性の大切さが宣言された。
細谷さんは続ける。「都会の中の生物多様性っていうのはどうしても見過ごされてしまいがちなんですね。そういう意味では、あの道頓堀川でまさかこんな都会のど真ん中で、こういう個体が見つかったということでは、ブレイクスルー、『生物多様性の保全』に新たな切り口が見つかったような気がしますね。」「こうやって自然にウナギが戻ってくるということを、もっと大阪市民や大阪府民が知るべきで、そしてそのことによって啓発が行われるならば、もっと充実した大阪市の川まちづくりというものが展開できるのではないか。」
細谷さんは、都会のウナギが、むしろ他の河川より健全に生きている点に注目し、ウナギに【シナントロープ=人と共生し得る潜在的な能力】があるのではないかと見ている。そして、自然保護を進める場合、自然環境だけではなく、人工的な環境にも目を向けていく必要があるのではないかと、新たなものの見方を示した。
生態系の頂点にいるウナギは、世界的にも、水域の生物多様性保全のシンボル生物として注目されている。未開の大自然を守ることはもちろん大切だが、『都会の中の生物多様性保全』に目を向けるきっかけになったという点で、この道頓堀川のニホンウナギは、学術的にも新たな視点からの研究の第一歩となるに違いない。
今回バラエティー番組で捕獲されたニホンウナギは、大阪市立自然史博物館の収蔵庫に「道頓堀川で採れたニホンウナギ」の標本第一号として、捕獲した関西ジャニーズJr.『Aぇ! group』リーダー・小島健さんの名前とともに登録された。「この時この場所に、この生き物がいた」その事実は、未来永劫 公の記録として残されることになる。何年か先、道頓堀川にニホンウナギが生息している、という環境をあたりまえだと思えるように、道頓堀川を、ひいては地球全体を見守っていかねばならない。














