「道頓堀川でニホンウナギ獲ったどー!」。毎日放送テレビのバラエティー番組の成果を、NHKをはじめ関西各局、全国ネット番組、ラジオ、一般紙、スポーツ紙、地方紙など1週間で60を超えるメディアが報道した。
確かに、道頓堀川で絶滅危惧種が獲れたことは、耳あたりの良いニュースであるように思える。ところが一部の人たちの間では、以前から道頓堀川にはウナギはいると知られていたし、実質釣りができない川であるにもかかわらず、夜こっそり釣り上げて食べる人もいたと聞く。ではなぜ《道頓堀川でニホンウナギが獲れた事は大きなニュース》なのか。そのホントの意味を、テレビ・ラジオで20年に渡り生き物ニュースを解説してきた『お魚博士』、元MBS報道局解説委員の尾㟢豪が解説する。
ニュースになった2つの理由
まず1つは、【公の記録がなかったという科学的目線】だ。大阪市は20年来定期的に道頓堀川で生態調査を行なっているがニホンウナギの存在は確認できていなかった。その理由は、大阪市が公的に行っている生物調査は、投網と言う漁具を使い、河川に広くどのような生き物が生息しているかを調査するもので、特定の魚種を狙ったものではないからである。
そんなエアポケットに目をつけたのがバラエティー番組『関西ジャニ博』だった。バラエティーという要素が実は大きい。通常のニュース番組なら、誰かの調査結果、もしくは誰かの調査の様子を取材させてもらうことはあるが、自らが特別採捕許可を取り、ロケの許可を取り、観光船の往来を止め、ダイビング調査してまで大掛かりなロケをするような事はなかなかない。バラエティーだからこそ、道頓堀川のニホンウナギはその姿を現すことができたのだ。
もう一つのポイントは。ニホンウナギという生き物が、【古より日本人の食文化に深く浸透している生き物という文化人類学的な興味】だ。人々の生活に非常に近しい存在で、さらに絶滅危惧種のニホンウナギが、大阪にとってシンボリ
ックな象徴の道頓堀川で、初めて確認できたということは、大きなニュースとして各社が取り上げる結果となったのである。
ホントの意味は、もっと深いところにある
元魚類学会会長で淡水魚の生態系に詳しい近畿大学の細谷和海名誉教授に、今回獲れたニホンウナギを見ていただき、道頓堀川でニホンウナギの生息が確認されたことの意味を伺った。
「これだけの形のいいウナギが、健康で病気もない状態で10匹も、大阪の道頓堀川という、まさに都市河川の中に居ると言う事は、環境保全、自然保護の視点からも、かなり注目する結果だと思いますよ。」














