絵を通じて長年、日本と中国の国際交流に力を尽くしてきた画家の男性が、岡山にいます。男性はいま、末期がんに侵されながらも絵を書き続けています。彼が伝えたいこととは。その思いに迫りました。

余命1か月「展覧会が済んで今月いっぱい命があれば十分」

岡山市に住む85歳の画家、佐藤安男さん。末期の胃がんと闘っていて、今は食事をとることすらままなりません。それでも彼は絵を描き続けています。

(佐藤安男さん)「絵本を作る、それが私の最後のワークです」

描いているのは童話の絵本。中国・洛陽市の子どもたちのためにと、最後の力を振り絞っています。

(佐藤安男さん)「日本の皆さんが、洛陽の友好をどんどんこれから発展させることが、私の最大の願いです」

絵を通じて洛陽と岡山の交流を深めたい。佐藤さんの願いです。


佐藤さんが描いた、優しい色合いの洛陽の街並み。作品展には洛陽の作家の画も並びます。新型コロナウイルスの影響で行き来が難しい中、「芸術で交流を」と佐藤さんが企画しました。

しかし佐藤さん自身、会場に来ることはできませんでした。

(佐藤安男さん)「私の希望では、展覧会が済んで今月いっぱい命があれば十分だと思っています。自分でもそういうのが分かるみたい」

佐藤さんの人生 60歳を過ぎ、画家として歩み始めた

佐藤さんは、県立高校の教諭を定年退職し、60歳を過ぎてから画家として本格的に歩み始めました。最初に描いたのは洛陽ではなく、身近な岡山の生活風景でした。

(佐藤安男さん)「岡山の駅を全部書きました。忠実に色まで写しています」

「駅舎の風景」佐藤さんの代表作の1つです。7年かけ、岡山県内に100以上ある駅すべてを訪れ描き上げました。日常の風景を、まるで生活の音が聞こえてくるようなやわらかいタッチで描いています。

(佐藤安男さん)「いい作品に会えば、感動して心が豊かになる、そこに絵の価値もある。私は、そういうものを自分では作れたと思っていないけど、作ろうという気持ちをずっと持ってきた」