プーチン氏への“忠誠心”争いが激化?
ロシアのメッセージアプリ『テレグラム』に、こんな言葉が載った。
「マーカーは自らの火力によって目標範囲内にある敵を優先的に選択することができる。今こそドンバス地方の戦場にマーカーを投入する」
“マーカー”とは…。マーカーは、ロシアが開発したロボット兵器。キャタピラーで走行し、機銃が装備されている。AIのよって自立走行し、敵を認識し攻撃する。いわば飛ばないドローン、“ドローン戦闘車”と呼ばれている。だが、アメリカのシンクタンクCNASのアナリストは言う。
ロシア軍AIロボット工学アナリスト サミュエル・ベテット氏
「結果を出すのはまだ早い。まだ初期のテスト段階。(中略)プーチン氏は何年も前から自国のためのAIの開発について話し、軍のためのAIの開発も語っている。ですからマーカーはプーチン氏が何年も前から言っていたものを実際に作ることができるってロシアの防衛部門が示すためのもの。」
まだまだ実戦での戦闘力を語る段階ではないようだ。松村氏も言う。
元陸上自衛隊東北方面総監 松村五郎氏
「(マーカーは)映像だとスケールが分からないので戦車のようにも見えますけど、実際には3トンくらいの小型のもので、基地内を無人で警備するような役割のものです。」
ここで興味深いのは、ドローン戦闘車ではなく、これを投入するとテレグラムで発信した人物だ。ロゴジン氏といい、現在占領したウクライナ東部2州の特別軍事顧問団のトップにいる人物。かつてはロシアの副首相も務めた。

ロシア軍AIロボット工学アナリスト サミュエル・ベテット氏
「今回の発表を(政府でも軍でもなく)ロゴジン氏が行ったことは、自分が軍事状況を理解し、戦闘環境も理解し、国内のハイテク軍事開発を支援する人物であるというメッセージを送りたいからだ。また、ロシア軍を成功させるために何が必要かを知っている人間として、プーチンの信頼を得ようとしているのだ」

プーチン氏の信頼を得ようと戦争に積極的な“取り巻き”といえば、民間軍事会社『ワグネル』のプリゴジン氏、チェチェン共和国の軍事組織『カディロフツィ』を率いるカディロフ首長だ。
どちらも非正規軍の親玉だが、ここに割って入ろうとするロゴジン氏は正規軍に身を置く。
しかし、ロゴジン氏も、プリコジン氏、カダロフ首長と同じような人物だというのは兵頭氏だ。
防衛研究所 兵頭慎治 政策研究部長
「ロゴジン氏は東部2州の親ロ派勢力を束ねてる。で、マーカーなどを使ってプーチンの至上命題である東部2州の完全制圧に自分がいかに貢献するのかアピールしてる。
東部での戦いで貢献し、プーチン大統領に忠誠心を示しながら政治的に引き立ててもらいたい、という思惑で動いてる方・・。愛国心が強い、強硬派の一人といっていい」
アメリカ戦争研究所のリポートによれば、プーチン氏の心がいつまでたってもバフムトを落とせないプリゴジン氏から急速に離れているという。その空いたプーチン氏の心にロゴジン氏が入るのだろうか?
(BS-TBS 『報道1930』 1月24日放送より)